39.《 ドジタルの日 》 2022/10/5

文字数 2,371文字



マイナンバーカードを作った。
マイナンバーカードを持つ理由はほぼ思いつかったが申請し、市役所に赴き、パスワードを入力して手にした。
お国の説明では、健康保険証になる、公金振込口座を用意できるというのがセールスポイント(?)だけど、健康保険証よりはお薬手帳がかさばるのでデジタル化して欲しい、公金振込の予定は当分思いつかない。
住民票等の市民証書がコンビニで受け取れるという点に至っては、市役所のほうが最寄コンビニより近いので意味がない。(もっと言えば、本籍が住所と異なるので対象外で問題外)。
では何ゆえにマイナンバーカードを取得したのか?
2万円分のマイナーポイントが欲しかったから、年金以外の臨時収入はとてもありがたいものなのだ。こんな風に考える国民が大勢いる貧乏ジャパンのはずなのに、現状は申請率50% 取得率47%と停滞しているそうだ。

国策として推進しているマイナンバーカードですら、こんな体たらくな現状である。
見渡せばデジタル後進国ならではの思い当たる節はそのほかにも色々ある。
2019年のこと、日本国民を認証するパスポート更新の際、料金は現金のみ、電子マネーはもちろんクレジットカードも受け付けてもらえなかった。
デジタル化の露払いのような「キャッシュレス化」推進をしていた政府としておかしいではないかと支払窓口に苦言を呈しておいたが、暖簾に腕押し・・・これが実情だった。
その時、近所の食べ物屋さんでキャッシュしか受け取らないお店は某蕎麦屋さん一軒だけだというのにである(そのお店には二度と行っていない)。
最近 ようやくパスポート支払いにカードが使えることがニュースになっていた、デジタル化以前のお寒いエピソードである。
ちなみに買い物のキャッシュレスは現時点で29%、改革の前途は暗い。

デジタル庁というお役所は、デジタル化を管理をするところではなくてデジタル化推進をするところだと云う。
であるなら官僚言葉では推進とは阻止することなのだろう(一歩譲って無視)、どこを切り取ってみても推進されてる様子は見えてこない。
コロナ感染人数を報告するのにFAXを使っていたため医療機関・保健所・厚労省各々の業務がパンクした・・・というのはアベノマスクと並んでコロナ渦での有名な日本自虐ジョークだった。
とすれば デジタル後進国日本の危機が顕在化してからすでに三年目になっているにもかかわらず、改革の結果が前述のマイナンバーカードの不評でしかない。

では世界ではデジタル化はどうなっているのか?
実際に経験したのは昨年(2021年)12月のホノルルマラソンでのこと、現地で紙(書類)をもってウロウロするのは日本人の僕だけ。ワクチン接種証明書、前日のPCR検査員性証明書、いずれも英文書面を常時携えて外出しないとデニーズでハンバーガーを食べることすらできない、むろんデニーズ以外でもダメなのであるが。
アメリカ市民はすべてモバイル機器内のデータコードを提示していた。
(ごく最近日本でもワクチン接種記録はマイナンバーカード取得者であればアプリからデータとしてスマホに取り込めることになった、国内で接種記録を求められたことはないが)。
象徴的だったのは日本出国とアメリカ入国のギャップだった、羽田(エアラインカウンター)で必要「書類」の束をドサッと提示する一方、ハワイの入国管理では書類不要、専用マシンでパスポートセルフ審査を済ませるなど、ヒューマンチェックは最小限になっていた。
一歩街に出てみると、民間レベルでのデジタル化は一様ではなくまだら模様だった。
それでもタクシードライバーがキャッシュを希望した以外は、すべてのお店でキャッシュレスが推奨されていた。
レストラン予約はアプリ内で完結する、コンドミニアムの経費明細はデータで送付される、そこに紙の存在はなかった。

一方で、日本の現状 民間のデジタル化はどうなっているのか?
いたるところに「紙」が存在している。
ネット予約とシネマイレージポイントが大きな特徴だったヴァージン・シネマズを継いだTOHOシネマズではネット予約が便利だが、当日現地シネコンで発券機からチケットを取り出す、紙である。だからこの発券時間をあらかじめ見ておく必要がある。
このチケットをシネコン入り口で提示し、係員が確認する。また駐車サービスを受ける際にも別カウンターでチケットを表示する。
紙のチケットが必要な理由が、機械化による経費削減と人員配置に勝るのだろうか? 少なくとも顧客への配慮はないようだ。
最近、銀行預金通帳が有料化になり紙離れをプッシュしているようだが、まだまだ通帳を後生大事に握りしめる年配者は多い。
宅配便を受け取るときに必ず受取書(紙)に印鑑(!)を押すのだが、AMAZON は受け取り確認を廃止し「置き配」なるシステムになっている、配送状況は逐次テキストで知らされる・・・
「本日2個のお荷物が届きます」、「配達が終了しました」のように。
世界クラスと日本のギャップは歴然としている。

デジタル化の遅れは国のせいなのか? 日本企業のせいなのか?
変化を好まない日本人国民性というのも無視できない。
太平の長き江戸時代を覚醒させたのはアメリカの黒船だった、富国強兵・国家主義の息の根を止めたのもアメリカだった。
現在デジタル・ネット文化を担うのは先ほどのAMAZONの他 FACEBOOK、GOOGLE、
APPLEなどアメリカ企業がずらりと並ぶ。
日本企業がかれらに追随することさえできないとすれば、黒船や進駐軍同様 一度パックリとかれらに呑みこまれてみてはどうだろう。
この提案が決して冗談で済まされないくらい現実は厳しさを増している、それほどに「ドジ」ばかりが目立つ最近の日本である。

「デジタル化」ならぬ「ドジタル化」から抜けられない 今日である。
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