115. 《 鬼も内っ!の日 》 2024/3/6

文字数 1,680文字



ビーグルのCOCOは今日で3歳になった、やんちゃで可愛い、何より賢い。
三代目の特権というか、甘やかしたせいもあって夜はぼくたちと一緒に寝るのが当たり前になっている。
正確に言うと、妻のお布団の中に潜り込んで眠る、夏場は暑苦しいにもかかわらず身体をピッタリと寄せて眠る。
嫉妬にかられて、時折COCOを布団の中に引きずり込んでみるが、観念してしばらく押さえ込まれたままになっているふりをして、その後ぼくが眠った頃合いを見てそっと抜け出して隣に移る。
やはり母親のぬくもりと父親の武骨の違いなのかと、今ではこの件に関しては諦めている。

ある夜、突然COCOが眠っているぼくの布団に鼻を突っ込んでくる…「入れてちょうだい」って。 3日前から帯状疱疹を発症し早めに就寝していた、痛み止めの鎮痛剤効果もありぐっすりと眠っていた。
COCOは布団の中に入ると、さっさとぼくの腕を枕にし、う~んと背伸びをした後、あっという間に眠りに入り、いびきをかきだした。
薬の影響でぼんやりとしてはいたが、ちょっとびっくりして妻を伺うと、どうやら彼女もおどろいている様子だ。
「COCO なりに心配してお見舞い代わりなのかな?」
「わかるのね、具合が悪そうだってことが」
COCOは愛犬でもなければペットでもなく、まぎれもなく家族だという証を見た思いだった、ちょっと痛みが和らいだような気がした。

帯状疱疹は人生で二回目の経験だ、前回は20年前以上のことなのでもう抗体はないらしい。
50歳以上になると帯状疱疹に気を付けましょう、ワクチン接種をしましょう・・・という啓蒙キャンペーンも見聞きしていた。
前回の貴重な経験から、強いストレスや疲労が発症の引き金になることを認識していたが、サンデー毎日をスロ-に過ごすことを生き方としている身なので、さほど帯状疱疹のことは気にもしていなかった。
114話でも述べたように、自分は免疫力が強いのだ、という根拠のない自信もあった。

思い返せば、孫三人と妻がインフルエンザでダウンした、妻の回復までの4~5日は家事ワンオペだった(できる範囲での)。
もう少し前を思い返せば、股関節治療の関節注射で副反応を2回発症し悪寒に震えた。
4年範囲で思い返せば、コロナ感染のため外出を禁じ、人との接触を断ち、マスク・消毒の日々だった、心身共に疲労を蓄積した。
昨年末(2023末)から少しづつコロナ空白を取り返すべく繰り延べとなっていた会合が復活し、オッカナビックリとは言え三密破りの機会も増えた。
あれやこれやで、疲れがすこしずつ蓄積し、体調を低下させていたのだろうか?

それでもなお、というか、なおさらに三密回避、消毒、換気を励行してきたのはひとえにウィルスという「鬼」から我が身を守るためだった。
「鬼は~外っ」である。
ウィルスの侵入阻止に徹してきたのに、まさか自分の身体の中のウィルスが暴れ出すという事態は想像していなかった。内なる「鬼」に体内から攻撃され敗退してしまった。
これも、いつものように加齢のせいだとしたくない。
じゃ~どうする?

「清濁併せ呑む」という あまり好きではない格言がある、生涯自分の生き方とは無縁のものだと思っていたが、今回のウイルス騒動で考え方を改めることにした。
悪いウイルスもそうでないウイルスも共存させること、鬼も チーム桃太郎も一緒に住まわせることでぼく自身はもっと強くなれるのではないか。
ユヴァル・ハラリ氏の指摘するとおり、これからは戦争、AI 、ウィルスの脅威とともに人類は新たなステージに立ち向かう羽目になりそうだ。
そのためには もっとタフでなければ生きていけないし、もっと優しくなければ生きていく資格がない・・・そこで 「鬼も内! 福も内!」


願いを込め「鬼も内!」と叫んだ節分の日から一か月が経つ、
COVID-19と称する鬼が招待に応じて初めて顔を見せたのが節分の二週間後2月16日だった。
ちょっとだけ苦しかったけれど、これからは もっとタフに、より優しくなれるに違いない。

もうすでに我裡には鬼さんたちがギッシリ詰まっている(かもしれない) 今日である。
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