44.《 連鎖の日 》 2022/10/29

文字数 1,027文字




妻と僕は同じ年1950年、同じ月 2月生まれ、10日先に生まれたの僕の優位など元からなかった。
いつも対等で世代価値観のギャップは感じたことはなかったし、中・高と同じ学び舎だったことで故郷を含めて共通の話題は多かった。

そんな二人も72.5歳を過ぎ、じわじわと加齢トラブルを痛感するようになってきた。
幸いにも今夏から息子一家が同居することになり、毎日の家事に忙殺され、以前のように高齢者二人が暇を持て余して困るような状況にはなっていない。
身体の不具合もいまにはじまったことではない、老眼、難聴、膝痛、神経痛にうんざりしてしまう。「ヨッコラショ」の掛け声がかなり増えた毎日である。
もうひとつの困りごとは「ボケ」。

ことの始まりと経過を時系列にたどってみる:

昨年マイカーをガレージに擦りつけて傷つけたのは僕、右前輪上部カバーを少々だったのでそのままにしておいた。
先日、妻が出先で左後輪上部カバーをコツンとやった、少しめくれた。
夫婦そろって運転には十分注意している矢先のことだ。
傷が右左そろったところで修理に出すことにし、いつものように地元の修理屋さんにお願いした。今は修理件数が多く1週間ほどかかるとのことで代車を用意してくれた。
それから約1週間後・・・
僕は妻が読み終わる一冊の本を待っていた、その本も含めてかなりの部数をBOOKOFFで買い取ってもらう予定だった。
「あの本ならようやく読み終わった」という妻、たしかに上下セットとはいえ1年間は長すぎる、それほどにこの一年色々あったことを思い出す。
「じゃあ今から行ってくるから、アウトサイダー(キングの秀作)ちょうだい?」
・・・「それがうちの車(修理している)に置いたままだったみたい」・・・
「今日引き取りに行くんでしょ、じゃあ BOOKOFF はそのあとにするよ」
めでたく修理完了した車で僕は近所のBOOKOFFに向かった。
BOOKOFFの買取明細を眺めてみると、「アウトサイダー(下)」が入っていないことに気づいた。
そういえば、妻がわざわざ車から取り出した本を僕に渡してくれたところまでは覚えているが、あとは不明。
「ボケ」としか言いようがない、意気消沈して帰宅する。
「肝心の本忘れたでしょ!」と突っ込まれるのを覚悟していたが妻はいない。
娘に、妻は何処に行ったのか尋ねる。
「代車のキーを返し忘れて持って帰ってきてしまったので、いま返しに行ってるよ」

「ボケ」は連鎖する・・・と自虐できる余裕がまだある 今日である。
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