62. 《 杞憂する日 》 2023/3/1

文字数 1,363文字



WASH( ウオッシュ)という英単語を覚えたのはきっと中学の頃だろう、60年ほど昔の話だ。
意味は「洗う」、きれい・すっきり・せいけつなどのイメージにつながる良い言葉「ウオッシュ」。

この「ウオッシュ」が最近いかがわしい局面で使われるようになったのに気づいた。
代表的なのが「SDGs ウオッシュ」というものだ。
56話、57話のなかでも触れたことがあるSDGsは持続可能な達成目標を掲げて、地球に住むすべての人間が幸せになるための企業取り組みを具体的に規定したものであるが、実態が伴わないのにSDGsに取り組んでいるように見せたり、また掲げた目標と矛盾する行動をとっているとSDGsに「ウオッシュ」がくっつけられ、悪質な欺瞞行為と判定される。
ウォッシュ企業に指定されると商品価値、ブランド力が著しく損なわれることになる。

大企業が敢えてSDGs活動を偽るはずもないと思っていたが、意外とこの「ウオッシュ」は奥が深い。
取引先あるいは投資先がSDGsを実行しているか否か…にまでSDGsの効力は及んでいるので、例えば人権侵害体制下で生産された素材を使用した商品、地球温暖化に適合しない企業への融資なども追求される(この2例はいずれも日本企業の犯した実例である)。
「ウオッシュ」と言われると、企業は消費者からの信頼を失うということであれば、「ウオッシュ」はまるで黄門さまの葵ご紋印籠のようだ。
「悪人どもめ、そこに控え居れ」というわけである。

もともとは、環境保護の取り組みを上辺だけで誤魔化すことを「グリーン・ウオッシュ」といったのをSDGsに転用されたということらしいが、その後、ピンク・ウオッシュ、ホワイトウオッシュ、ブラック・ウオッシュなどグローバル運動の偽物に「ウオッシュ」が付けられるようになった。
ちなみに、ピンク・ウォッシュはLGBTQ(性の多様性)に関連する欺瞞であり、ホワイト・ウォッシュは白人が非白人を演じる、ブラック・ウォッシュはその逆ということである。

SDGsのウオッシュに話を戻すと、
地球に住むすべての人が皆幸福になるためという目標は大いに結構だけど、利益優先の企業にとっては厄介な障害を自ら設定することになるわけだから、理論的にSDGsを達成することはできず、相変わらず地球環境は改善されず人間は貧困にあえぎ地球生物は死滅していく。
まして、SDGsをうまく活用して経済発展(挽回)を図ろうという試みは、個人の直感ではあるが到底成功するとは思えない。

何も難しく構えることはない。
①戦争・紛争を無くす
②未知の病気に備える
③富の分配をする
三点を実現するだけでSDGsなんて一緒についてくるだろう。

ただし、そのためには現行のシステムを捨てて新しいものに切り替える必要がある。
国家主義を改め、賢明な投資を促し、貧困を撲滅する、そのプロセスで地球環境は改善され人間の叡智が集積、活用されるだろう。

「そんなことは所詮夢物語、無理でしょ」という非難、嘲りがあちこちから聞こえてきそうだ。
そんな者たちのためには人間の営みをきれいさっぱりと洗い流す最終「ウオッシュ」が待っている。例えれば ノアの洪水のような文字通りのウォッシュ。

人間が間違いに気づき 今のシステムを捨て去らない限り、そんな悲劇の日がきっと来ると、 杞憂する今日である。
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