3.《 個食グルメとマティーニの日々 》  2022/2/2

文字数 14,312文字

 2021年ホノルルマラソンに参加するためワイキキに8泊滞在した。
 マラソン以外のお愉しみは「夕食」、それも感染対策に基づいて一人きりで、
 ってか そもそも一人旅だから。
 リゾート型STAY HOME における個食グルメエッセイ8編、
 【今日である】ことの証になったのだろうか。


《 個食グルメ 》 -01-
 2021/12/10
 ホノルルマラソン参加のために数々の感染対策をクリアしてJAL074 便に搭乗する。
 ここから僕の個食グルメが始まる、人と会食はしない、と言うだけのことだけど。
 JAL日本発の機内食は近年優秀になった、今回はミシュラン三つ星レストラン、
 生江史伸シェフの監修。
 【牛バラ肉と栗のラザニア】は当然ながら初めて経験するコンビネーション、
 こんなのあり?と云うくらい美味しい。
 小ぶりの烏賊のマリネ、カリカリとした烏賊食感にゆずの薫りがきっちりと効いている。
 変哲もないサラダ・・と思わせて、この野菜はどこのもの!食感と瑞々しさに驚く
 (機内食ですよ!)。
 棒状のパンも、今まで知らなかったモチモチ、フランスパンのネタを食べているようだった。
 幸先の良い、【個食のグルメ】スタートだった。



《 個食グルメ 》 -02-
 2021/12/10 (ハワイ時間)
 ホノルル到着は出発と同じ日の朝に戻る、いつものことだ、当たり前だけど。
 二年ぶりのダニエル井上空港は閑散としている、搭乗時に感染対策をすべてチェックされて
 いるので、アメリカの入国は通常通り、ワクチン接種やPCR検査陰性証明の提示すら求めら
 れない、 朝の到着便は主に日本からのフライトが集中するが、便名も乗客も少ないので
 イミグレーションはガラガラ。
 30分で空港外に出ることができてびっくり、目の前の道路もガラガラでびっくり、
 予約していたタクシーに電話すると2分で車が現れる。
 2年ぶりにヒルトン・ラグーン・タワーに入るが、部屋の用意ができていない。
 ゲストが少ない分、スタッフが削減されているので結局繁忙期と同じように、
 チェックインは午後になる。ヒルトンにはそのための待機ラウンジがある、訪れると
 いつもいる愛想の良いスタッフは今日はいない、誰もいない、
 勝手にシャワーとトイレを使い、夏姿に着替える。
 マラソンスタートまでの準備スケジュールはタイト、その足でレースナンバーを受け取りに
 コンベンション・センターへ、
 日本人参加が少ないとの情報があったので、日の丸付きのサッカーポロシャツで国威を
 高揚する(・・・なわけないだろう)。
 日本サッカー協会100周年企画で名前(KAGAWA)とナンバー(10)を入れてあるから、
 万が一名前を忘れた時のために着用した (・・・なわけないだろう2)。
 コンベンションセンター1階でワクチン接種証明・パスポートを確認されて4階に、
 今回のスポンサーはJALとミズノの2社だけ。いつもは大賑わいの記念グッズ売り場は
 ミズノのみ、ガンバレミズノ!
 会場を出たところで(選手のみ入場可)、TV局(いつものTBSではないローカルの2局)
 委託チームにインタビューされる、
 間違いなく日の丸効果だ・・・「日本からいらっしゃいましたか?」・・・そうですとも。
 インタビュー内容は、
 【なぜこんな時に、YOUはわざわざマラソンに来たのか?】がポイントだった、
 記者は無論そうは言わなかったが。
 その理由は、一番悩み続けてきた僕自身が本当は聞きたいくらいだったが、
 僕にもそれなりの決意(言い訳かも)があった。
 ①ハワイにお世話になった、アイアンマンレース、ホノルルトライアスロン、そして今回の
 ホノルルマラソン、僕の人生の大きな彩になった、だからこんな時こそそのお礼を表明した
 かった、行動で。
 ②2か月後に、「平均健康寿命(72歳)」に達する、いつまでアスリートで いられるか? 
 自信が無くなってきている。と言って現在がベストコンディションでもないが、来年のこと
 はわからない、この感染症の動向もそうだが。
 ・・・というようなことを喋った・・・
 勝手な年寄りアスリートとして構成されオンアーされても仕方がないが、
 このインタビューで決意が一層強くなった、想いは口に出してみるものである。

 コンベンションセンターからの帰りに、スーパー「ドンキ」に寄って食料を買い出しする。
 機内ではガラガラだったので横になれたのに眠ることはできなかった、早く眠りたいので
 手ごろな総菜ととりあえずの空腹感を満たすもの、日本直送の小あんパン6個入り、ハワイ産
 おにぎり(昆布)、焼肉弁当、野菜サラダ、パパイア。
 重いもの(水、ビール)はコンドミニアム近くのABC で調達する。

 再度、ヒルトン待機ラウンジに戻る、やはりスタッフはいない、いやゲストも、誰もいない。
 中央のソファーでおにぎりとあんパンをお腹に入れる、弁当は部屋に入ってから。
 フロントから電話があり部屋の用意ができた、カードキーを貰ってようやく入室、落ち着く。
 焼肉弁当とサラダはお皿に移して見栄えをよくすると、おいしそうになる、もしかして
 グルメのように、ビールはPALE ALE 。
 帳が降りる直前の夕陽に包まれると、
 ドンキの焼肉弁当が「ステーキ・オン・ザ・ライス」に、
 サラダが「シェフズ・シーザーサラダ」に見えてくる。
 ・・・なんて思うよりともかく眠い。

 地上ではT.G.I.Fの野外ブッフェパーティが始まって、フラの音楽と太鼓が響き上がってくる。
 明日はレース前のカーボローディングだから、グルメは難しいね・・・と自分に言い聞かせ、
 フラの大音響を子守唄にして爆睡に陥った。



《 個食グルメ 》 -03-
 2021/12/11
 12月10日 18:30にベッドに、すぐ深く眠り、すぐに野外パーティの音響で起こされるを、
 うっすら意識しながら目が覚めたら、まだ21:30だった。構想中のエッセイ( 仮題 
 今日である あること難き 今日である)のプロローグを書き始める、
 なんでこんな時にと思いながら・・・結局24:00に再度睡魔に襲われるまで書き進める
 ことができた。
 「レース前日」は、大事な一日になる、たとえそれまで完璧な準備ができていなかったと
 しても、マインドを奮い立たせ研ぎ澄ませることで、意外なパワーが出せることもあるか
 らだ。
 翌日のレーススタートから逆算する、5:00スタートだから4:00にはコンドミニアムを出る。
 朝ごはんは2:00が理想だから、1:00に起きれば食事まで軽いストレッチができる。
 19時間の時差(日本とハワイ)は急には修正できないので、眠ることができないかもしれ
 ないが19:00には横になる。
 たとえ睡眠が取れなくても6時間身体を休ませることができる・・・と信じる。
 夕食はカーボローディング(炭水化物を食する)でパスタが理想だが、ワイナラ食堂が
 閉鎖してから適当なお店が見つからないまま、最近(2年間)のお店情報も知らない、
 唯一思いついたのが「デニース」、きっと何でもあるだろう。
 夕食を16:00にする、カピオラニ公園(ゴール地点)に衣類預けた帰りにデニーズに
 立ち寄ろう、
 15:00ごろバスで公園に向かう・・・前回(2019年)前日16㎞歩いて膝を壊した苦い
 経験から前日は近くてもバスに乗る。
 ということで、15;00まではコンドミニアムにて休養する。
 6:00 目が覚めて朝食を調達するためタワーの隣のアイスクリームショップ (Lapperts)で
 シナモンロールとクロワッサンを各3個買う、どちらも大きなサイズで一個でも持てあます
 のだが、明日のレース前に3個食べる予定にして、今日は2個にする、 なんといっても、
 レース前日はカーボローディングデイなのだから。
 15;00まではレースギアの用意、ランニングシャツにレースナンバーを付け、タイツ、
 キャップ、靴下、シューズを試してみる。
 今回のレースではセルフ給水所があるのでカップも携帯する、エネルギー補給のために
 スポーツ羊羹を3本、塩タブレット、ボルタレン(膝の痛みが出た時のため)、それらを
 ポシェットに入れてチェックする、この装備(ポシェット付き)での練習も積んでいる、
 本番で初めてのことは決してやってはいけない、これはアスリートの基本だ。
 バスで乗り過ごしがあったが、HOLOカードなので3回目からは無料になる、
 と言ってウロチョロする余裕はないのだけど。

 ということで、
 ようやく【個食グルメ -03-】に辿り着けたようだ。
 デニーズ(ワイキキビーチ)入店に際してワクチン接種証明書とパスポートを提示する、
 外国人に厳しいのは日本と同じだ、世界は一つ人類は兄弟・・・ということは綺麗ごとだ、
 外国人を見ればコロナと思え・・・とまではないにしろ。
 しかし、お目当て肝心のパスタ料理はすでに売り切れていた、デニーズなのに?
 ・・と思って周りを見ると16:00とはいえ他に2組しかお客がいない。
 なにやらハワイ初日から違和感充満になってしまった。
 仕方がないのでチキン唐揚げ・フライドポテトを頼む、理想のカーボローディングとは
 いかなかった。
 熱々揚げたてのチキンささみとフライドポテトとひとかけのパンが届いた、
 さすがデニーズ素早い、お客も少ないけど。
 デミグラ風のソースに絡めてチキンをかじる(熱いのでそっと恐る恐る)、意外と塩味が
 きいている、暑さ対策には塩分は欠かせない。
 レース中にも忘れてはいけないのは塩分・ミネラルの補給だ、特に湿度・温度とも高い
 ホノルルを見くびってはいけない。
 日本のデニーズと違い(アメリカ系のファストフッド店はいずれもだが)ボリュームが
 桁違いだ、チキン3切、ポテト少々で ギブアップする。実はここ最近一度に大量の食物を
 取り込めなくなっている。
 今更反省しても仕方がないのだが、7月から減量生活で、67㎏から61~62㎏まで5㎏マイナス
 を達成したもののその分胃が縮んでしまった。

 アスリートたるもの食事制限で体重を落としてはいけない、運動量を摂取量以上にするべし。
 いっぱい食べて、いっぱいトレーニングする、そんな懐かしき良き時代があった。
 デニーズのチキン唐揚げに加齢を感じた。



《 個食グルメ 》 -04-
 2021/12/12
 コロナ感染拡大(パンデミック)に翻弄された2021ホノルルマラソンがスタートした。
 レースの実録レポート、今回開催の意義に関しては別途考察する予定だ、本短期シリーズ
 テーマは「個食グルメ」なので ここでは軽く触れるだけにしておく。15回参加した中では
 最長タイムでゴール、ゴール後ここ数年はグロッキーで歩くことすらできず THE BUSで
 コンドミニアムに戻っていたのが、今回は30分かけて徒歩で帰還した、楽しみにしていた
 マラサダ(ハワイのドーナツ)が とっくに無くなっていたことに腹を立てながら。
 いつもはマラサダの匂いに吐き気を覚えていたものなのに、今日はゴール後のお愉しみ
 として最後まで頑張ったのになぁ・・・
 このように、レースのパフォーマンスは振るわなかったが、体調はすこぶる快調な
 アフター・マラソンが始まった。
 マラソン後のオーソドックスな手順として、まずはお風呂に入り汚れと疲れを取る。
 そのついでに、ウェア上下、キャップ、ソックス、バンダナを洗い、シューズは持参した
 古い歯ブラシでこすり洗う。
 それらを全部干してから、さぁ食事・・・というのだが、今回は帰宅してすぐに湯を
 沸かしてカップスープを食べる。
 銘柄は決まっている、「トマトスープのモチモチパスタ」、水分摂り過ぎで胃が痛んで
 いるので、レース後はスープなのだ。
 あっという間にスープを終えて、非常用に持参したセブンイレブン名店ラーメン(東京ホー
 プ軒)も平らげる。 もちろんビールと一緒に。
 どちらも美味しいカップ食品なのだろうが、僕には宝物が身体の中でエネルギーに変換
 されているような恍惚感を感じた、
 要するに腹が減っていた。
 強い疲労の時、マラソンの後などは昼寝してもすぐに目覚める・・・はずだったが気が付くと《ここはどこ》状態になっていた、 時はすでに17時。

 今までホノルルマラソンの後はパフォーマンス鉄板焼き「紅花(近年AOKIに変更)」で
 ワイワイガヤガヤと盛り上がる趣向だったが、コロナ感染拡大下では第三者との会食は
 ご法度だと思い、この選択はなかった(一人で入店してもグループに組み込まれる形式
 だから)。
 コンセプトは「個食」、独りでも食事ができる場所が理想だけど、リゾート地にはなかなか
 ぴったりした食事処はない。
 閃いたレストランは、ヒルトン・ハワイアン・ヴィレッジ内の「FRESCO」、部屋から
 徒歩1分、なにやらコンドミニアムオーナーには特典もあるらしい。依然よく通ったイタリ
 アン・レストランだが、ある年からアルコール持ち込み制になって以来、足が遠のいていた。
 ひと昔前は名門ホテルのメインダイニングのひとつとして、重厚で格式あるレストランだった
 のにである。
 その頃ヒルトン・ヴィレッジにはフレンチ、イタリアン、中華の三大レストランがあったが、
 いまや世の中はカジュアルに突き進んでいるのだろうか、ことごとくその地位を失っている。
 フレンチはステーキハウスに、中華は消えてしまい、イタリアンは今回ついにその実態を
 知ることになった。
 当然のように予約を取るべきと思い、コンシェルジェに連絡しようにもコロナ対策として、
 スタッフが削減されてまだ復帰していない。徒歩1分のところに電話するのも不合理なので、
 ノーアポでお店に入った ・・・全く以前とは違ったインテリアに変わっていた、驚いた。
 分厚いカーテン、イタリアンなテーブルクロス、暗い室内に映える間接照明などは跡形も
 なく、解放された窓から海風が吹き込み、間隔の狭いテーブルレイアウト、簡便なテーブル
 ・チェア、・・・あぁこれが現実だと認めるほかなかった。
 テーブル担当の女性にお店のコンセプトを訊いて確認した、思った通り本格的イタリアンを
 目指してはいなかった。
 確信はないが、平均的アメリカ人にはこれがイタリア料理店なのだろう。
 3日後に予約しているシチリア料理店にある(はずの)こだわりはFRSCOにはない、
 グラッパがないのはまだしも、エスプレッソも出せないイタリアンだった。
 お薦め通りのメニューにしたところ、これなら僕の方が美味しく作ることができるのに
 ・・・と確信するほどのレベルだった。
 マティーニも冷えていない、サンジョベーゼと言いながらその真偽が怪しい、それでいて
 価格は妥当でない。 リゾートホテル内で生き残るには、資質と戦略に欠けていた、
 ちょっと心配だ。
 ただしである、
 レース前にはFRESCO のパスタは適しているかもしれない、
 近くて便利だし、お味はともかくカ-ボローディングだから。



《 個食グルメ 》 -05-
 2021/12/13
 マラソンを完走して、帰国までの一週間の過ごし方の基本は:
 安全・安心を心掛け、人の意見を聞く力を持つこと。
 ・・・決してアイロニカル・メタフォーではない。
 当初のミッションであったマラソン70代完走を達成できたので、あとは非難の的になる
 「感染」を避けるようにということだ。しかし、病気になって、なんで叱られるのか
 わからない・・・大変ですね早く良くなってくださいね・・だろう、きっと。
 感染したくて感染するわけではないから、感染者を非難するのはかんせんしない(感心し
 ない)という議論は無論ここではしない。

 要するに、この一週間は部屋から出るとマスクをして、手洗い、消毒、密を避ける
 ・・・日本での日常をワイキキで実行するだけだ。
 暑い日中でもマスクをして歩く、そうして欲しいという家族からの強い要望を聞く力を
 僕は持っている。 簡単なことだ、リゾートにいるからと言って浮かれない。

 そうすると、じゃあ何をする?
 ワイキキ滞在中に過去お気に入りのお食事処を回ってみる、これが《 個食グルメ 》の
 コンセプトだ、何ら大したもんではない。まさか朝から晩まで食べ歩くわけにもいかない
 ので、日中はビーチでサナトリウムする ・・ボケっとするのだ、老いの裸をさらして。
 リサーチした結果、お気に入りのファッションブランド・ショップも閉鎖、撤退、倒産で
 消えてしまったが、食堂(レストラン)はしぶとく残っていた。用もないのに、ワイブラ
 (ワイキキ散策)で密に嵌まらない、幸か不幸かアイランドへのツアーは2年前に一通り
 終わったので、島巡りに未練もない。

 いつものように前説が長くて恐縮だ、個食グルメを続けよう。
 月曜日は「RUTH'S CHRIS」ステーキハウスにした。
 フィレステーキは数年食べていない、食べたいとも思わなかったが、マラソン完走の体力
 補給には上質のたんぱく質が良いに違いない。
 個食において小食が問題になる、減量したせいかめっきり食が細くなっているところに、
 あのアメリカンボリュームに挑むわけである。
 個食において写真撮影も問題になる、家族がいれば料理を入れたナイスなポートレートが
 撮れて映えるのだけど。
 小食に関してはサイズの小さい料理を選び、品数も厳選して少なめにし、あとは死ぬ気で
 がっつくことにした。
 写真撮影に関しては初めて自撮り棒なるものを用意して、いささか長めのショットを自分で
 撮ることにした。
 個食における決定的なディスアドヴァンテージは話し相手がいないこと、と言ってテーブル
 担当者に絡むのだけは大人として避けたいもの。
 現在は便利になった、インターネットである。
 お行儀は悪いが食事中チャットすることで楽しいひと時になる、もちろん相手にすれば
 大きな迷惑に違いない、もう家族にはこれ以上無理難題を頼むことなどできない。
 そうすると、残ったのはお酒を飲むこと。
 レース前1か月前から、通常の飲酒量を50%減にしてきたので、これはなんとも嬉しい
 ソリューションだ。 ひとつルールを決めてみた、食事の前に「最初は必ずマティーニ」。

 さぁ、それではRCSHでの「個食」や いかに?
 ここはスタッフがみんな愛嬌があって楽しい、マネージャーは各テーブルを飛び回って
 ジュークをまき散らしている。
 早速、マティーニを頼む、ベースのお酒の種類、作り方、レモンかオリーブか…きちんと
 聞いてくれた。昨夜のフレスコは勝手にウオッカベースでオリーブ(僕は嫌い)が差し込
 まれそして生暖かった、大きな違いだ。
 店内WIFIのPWが有効にならず、再三訊き返したが、どうやら僕の聞き取り能力に問題が
 あったようで、担当に直接入力してもらい、本場(?)食事ネットサーフィンを満喫した。
 8オンスのプチ・フィレステーキは程よい量だった、お味はもちろんRCお墨付きの極上級。
 どうしても食べたかったガーリック・マッシュド・ポテト、シンプルなステーキサラダは
 ともに素材のエッセンスが口の中にはじける美味しさだった。心配していたガーリックの
 薫り(匂い)は品位すらあった、ワイキキのサラダが美味しくて歯触りがいいのはこの地の
 温度と土のおかげに違いない、ハワイに感謝する。
 ステーキにはピノ・ノワール、担当がメニューを指して「どっちの?」と聞くので
 「安いほう」と言ったらニンマリして「それが正解ね」(と思った)。
 コナ・コーヒーは本物、デザートは何でもいいと言ったら、ラズベリーシャーベット、
 定番の甘さだったと思うが、もうこの時点で味覚の記憶は残っていなかった。

 8年前再開発されたワイキキビーチウォークには、RCSHの他僕の好きなお店が何軒かある、
 今週はあと2軒予約を入れてある。別にこのブロックが特別グルメ地区ということではなく
 コンドミニアムからワイブラで15分のアクセスが便利だからだ。
 ただし、ワイキキビーチウォークから歩いて戻る際に、TAPA BARの脇を通ることになる。
 今夜のTAPA BARはどうやら閉まっているようで暗い、いつもライトで明るく輝いていた
 ステージも闇に沈んでいる。ステージでのバンド(ほぼハワイアン)やフラダンスは屋外
 とはいえ狭いスペースなので閉鎖されたのか?
 そんな暗闇の中に蠢く人影がある、ハイテーブルで、深めのソファで2~3組のゲストが
 律義にお酒を嗜んでいるように見えた、 何せ暗いので定かではない(酔ってもいて)。
 気が付くと僕もハイ・チェアーによじ登って大きなため息をついていた、しっかりと
 ソーシャル・ディスタンスを取るまでもなく周りに人はいない。
 アメリカン・ウィスキーを頼んだら、プラスチックカップのMaker's Markが届いた、
 どうしても味わうことなどできなかった、無理だった。
 まだ、リゾート復活には程遠い、その実感が強まった。



《 個食グルメ 》 -06-
 2021/12/14
「アラン・ウォンズ」、老舗であり格調と地元の味を楽しめるハワイらしいレストランが
 廃業した、消えていた。まぁ、世の趨勢とはいえチャイナツアーが無くなった分、観光地は
 様変わりする、ハワイツアーのアイコンだったDFSのビルが今はベニヤ板で囲まれていた。
 もちろん、ジャパンからのリピート客も途絶えているけれど、チャイナパワーと比べれば
 微々たるものだ。
 インタ-ナショナル・マーケット・プレイスが再開発されたのは5年前、もとはその名の通り
 アジアの夜市をイメージした雑多で怪しげな小さなお店が密集していたが、近代化という
 名のもとに3階建てのショッピングモールに変身した、いや変身させられた。
 カラカウアとクヒオのお大通りを繋ぐお洒落な横丁ができたわけだ、王者アラモアナSCが
 巨大に進化する中でワイキキ中心部に新しい選択肢ができたことになる。
 新型コロナの二年間が オープン・スタート・ダッシュが重なった不運はあったが、
 それでも 地の利は大きい。
 以前から敷地に生えていた大木をそのまま残して、真ん中が開放した丸型のビル、その屋上
 部分(3階)がレストランエリアになっている。
 今夜のお店は「HERRIN BONE(ヘリン・ボーン」、名前からして魚料理のお店だと
 わかる、僕の新規開発ターゲットだ。
 本店カルフォルニアの大手チェーンレストランだとのこと、いまや大資本でないとハワイ
 進出は難しい、コロナ下でこの2年消えた名店はほとんど個人商店だったことを思い出す。
 前日、お店の場所を確認するため昼間に訪れているが、今夜の貌はまるで違っていた、
 ゴージャス!
 例によって、ワクチン接種証明(パスポートも)提示の後、席の要望を聞かれる
 「テーブル、それともカウンター?」 落ち着きたいので「テーブル」をお願いしたのが
 今夜の失敗第1号、店内は吹き抜けの大ホールになっていて仕切りはない、テーブルは結構
 密にレイアウトされ、お客はグループが多い、皆で料理をシェアーしワイワイガヤガヤ
 食べている、日本の 感染対策から見れば御法度ばかりだ。
 ワ~ンとうなりのような騒音で、テーブル担当者の説明が聞きづらいところに加えて、
 マスク越し、僕の難聴、そして英語力不足。
 こういう時のソリューションは、「初めてでよくわからない、お薦めでいいよ」。
 結局最後まで一度もメニューを見せられることなく、とはいえ告げられる魚の英語名も
 分からないまま運を天に任したオーダーとなった。
 (ちなみに魚の英語名を覚えるのが昔から特別苦手だ、すぐに忘れる)
 無論最初は マティーニ。
 タンカレー10を使ってくれたが、グラスが小ぶり過ぎてじっくり味わう暇もなかった、
 これじゃアメリカ人も怒るでしょう? 僕は我慢しますけど。
 オードブルとして二品・・・と思ったが、後から考えるとカルパッチョ風の白身魚
 (だから魚の名前がわからない)がオードブルで、もうひとつのサーモン(だと思う)の
 煮つけがメインだったのだろう、価格から推察しても。
 カルパッチョのソースには今まで味わったことの無い香草が刻まれていた、(面倒なので
 質問はしなかったが)この手の驚きはいつでも嬉しい。
 煮魚には大きな白ネギが一本敷かれていて、程よい歯ごたえに調理されている、煮魚の
 ソースは椎茸の出汁(だと思った)、料理全体が和風出汁の香りでまとめられていた。
 お薦めのピノ・グリッジョは酸味が強く料理とマッチしなかった(コスコのそれでももっと
 美味しいのに)、料理に負けないヘビーな白にした方が良かった。ここまで2品、自分では
 オードブル2品と思っている、まだ食べられそうだった、ここが微妙なところだが。
 馬鹿なオーダーをした・・・「締めになるようなもの頂戴」って。
「締め」を説明する・・・ちょっとまだ食べれるのでお腹いっぱいになる物な~に?
 なかなか理解してもらえないので・・・例えば「パスタ」と言って、ようやく納得して
 もらった。
 やってきたのはシーフッド満載のイカ墨リゾット、すぐに失敗の決定版だと気づいたが、
 もはや遅い、当然ながら。「個食グルメ」を象徴するキーワード、爆食いモードに変える、
 お米ではなくお魚から手を付けるのだが、いくら食べても下からどんどん湧いてくる。
 ギブアップした。
 コーヒーとデザートをスキップしたいと告げたら、真顔で同情されたうえで
 「リゾット ちょっと 多すぎだよね」だって。
 早く言ってよ~。



《 個食グルメ 》 -07-
 2021/12/15
今夜は再びワイキキビーチウォークに戻って、おなじみのお店に。
「Taormina Sicilian Cuisine (タオルミーナ・シチリアン・キュイジーヌ)」は開店した年
 からのファンだから10年以上のお付き合いになる、
 もっとも年に一度のお客はお店にとってはどうということの無い存在だろうけど、顧客が
 自分はお得意様だと思い込めるのはそれなりのお店の魅力があるからだ。
 お味は(おそらく)日本人お好みのシチリアン、魚介食材が多いので、ハワイ産の新鮮な
 素材を活用できる相乗効果で、パーフェクト。
 イタリアのワインも、アメリカのワインも優れものが揃っている、ソムリエがしっかりと
 管理している・・・つまりはお酒が旨い。
 接客のベースは和式(?)、というのも変だけど細やかな気遣いが感じられるのが僕には
 嬉しい、店長は日本人(今回は会えなかったが)。

 さて、日本のイタリアンレストラン以上に通っているタオルミーナ、メニュー内容もよく
 知っているが、新作またはコロナ禍の変化が気になるところだった。
 しかし、今回は「個食グルメ」の旅、複数料理にトライする失敗は昨晩経験したばかりなの
 で慎重に検討した結果、大胆な結論に至った。
 まずは マティーニ、実はこのお店のマティーニが一番気に入っている、自伝「あるいは
 トライアスリートという名のナルシスト」の表紙にもこちらのマティーニの写真を使っている
 くらいだ。
 何も変わっていませんように・・・と祈りながらキンキンに冷えたグラスに口をつける、
 問題なかった、GOOD AS USUAL.  僕が次に注文したのは骨付きカツレツ、いきなりの
 メイン料理だ、アンチパスタもズッパもパスタもサラダもすっ飛ばして。
 実はもうひとつの選択肢があった。
 アンチパスタばかりを注文して、ワインを飲み比べるという案だ、しかしアルコールに
 弱くなっている体調を考えてこの案は却下した。強がりで言えば、パスタは自分の料理した
 ものが十分に美味しいことを確信している、ただ特殊な素材(鰯、雲丹、タコ)が羨ましい
 だけだ。

 隣のテーブルではイタリア系の家族三世代六名が賑やかにフルコースを愉しんでいるそばで
 僕は「カツレツ!」と言い切った。
「一人では食べきれないことはわかってるよ」と説明したが、担当は驚くこともない、
 いろんなお客がいるのだから。
 ワインは当然のキャンティ、グラスワインだけれど。
 三分の一でお腹がいっぱいになった、ちょっと無理して半分まで食べて終了。
 エスプレッソをドッピオで、グラッパアレクザンダーもつけてもらう。
 会計をお願いしながら、「やっぱりパスタを食べたかった」と もう後悔していた。



《 個食グルメ 》 -08-
 2021/12/16
 ワイキキビーチウォーク3軒目のお店は、Roy'sワイキキ店。
 数日間 ワイブラの途中、またTHE BUSの窓から相変らずRoy'sが繁盛しているのが
 わかっていた。
 このお店のマティーニも僕の一押しだ、分厚いワインリストを横目にまずはカクテル
 ・・このスタイルはクラシックだけど、担当者とのやり取りもお決まりだけど、Roy'sの
 スタイルとして定着している。 大ぶりのカクテルグラスにこれまた定番の茹で枝豆の
 ごま油漬けが運ばれてくる・・・そんなシーンを期待して海岸沿いをRoy'sへ。
 お店食事は今日が最終日になった、明日希望していた日本食の「魚三」が満席で今回は立ち
 寄ることができないから。
 僕のテンションは一気に上昇していた、予約は8時半 おそらく最終回だろう。

 入り口ホールでは20人くらいの女子会、全員トナカイのヘッドバンドをしている、
 クリスマス会かな?
 予想していた通り席は入ってすぐの壁際の二人席、以前も個食の時はこの席だった。
 担当のお嬢さんがテーブルに数頁の紙を置いて離れていった、いやちょっと待って、
 まずはマティーニを注文するのに。
 しばらくして戻ってきた担当さんは、「決まったの?」って感じでオーダーノートを
 手にする。マティーニを注文したが、食事はどうすると聞かれる。
 ちょっと待って、プレイバック
 ・・・大体ワインリストすら持ってこないじゃないか・・・ プレイバック。
 不審そうな表情(マスク越しで想像するだけだが)で立ち去る、その後全く戻ってこない。
 テーブルの紙を眺めてみると、そこにはワイン、カクテルなどが掲載されていた、これが
 ワインリストか?いやワインペーパーか?
 そのうちにマティーニと突き出しの枝豆を飲み・食べつくしてしまう、気合を入れてきた
 のでお腹がすいている、堪らずに忙しそうに立ち動く担当に声をかける、
「食事のメニュー 頂戴」
「そこにあるんですが・・」と紙を示す。
「えっ、これはワインペーパーじゃないの」
「いえ、お食事も入っています」
 よくよく見ると1ページ分が食事リストになっている、1ページ分だけ、そのほぼ半分は
 寿司と刺身、お気に入りのハワイ料理が見当たらない。
 Roy's はパシフィックキュイジンの旗手として僕は理解していたのに、これでは和食のお店
 ではないか?  いったいお客さんは何を選んでるのだろうか、端の席なので他の人が何を
 食べているのかみえなかった。

 担当に僕の希望を伝えた、以前好みだった料理を説明した。
「それはもうメニューにはありませんが、一番上の段のクラシックというところがそれに
 近いですよ」
 たしかに「クラシック」のジャンルに5点料理があった、どれも馴染みのない名前だったが
 盛り合わせを頼んだ、内容は不明のままに。
 それらは、幸いにもぼくの思っていたRoy'sに近いものだった、いや その名残だった。

 Roy'sに起こった変化とは何だろう。
 コロナパンデミックによる業態変更がそのキーワードのような気がする。
 ハワイの経済活動制約が緩和されたのは日本と同じ11月、今はそこからのリハビリのような
 再開努力中なのだろう。
 優秀なスタッフは、恐らくハワイを離れたり、転職したりサバイバルしていたはずだ。
 Roy'sが以前と同じオペレーションができるまでには時間がまだまだかかりそうだ。
 僕が今夜 目にしたのは、Roy's の立ち上がる姿に違いない、
 であれば 不死鳥のようにまた舞い上がれ、飛翔しろ。



《 個食グルメ 》 -番外 グルメとは言えないけれど編 -

 ランチを食べない生活習慣になってから数年になる。
 ウイルス感染拡大に伴うステイホーム、そうでなくても外出機会が少なくなった働き止め
 以降の日々に対応する体形維持対策ではある。
 日常生活では朝ごはん料理担当なので必ず朝ごはんは食べるのだが、リゾートに滞在中
 くらいは気ままにしようということで、個食グルメ以外は適当な時間帯に食事をすることに
 した、つまりは「ブランチ」なようなものである。

12月13日
 レース翌日は、食べきれなかったレース当日食のクロワッサン、追加としてヨーグルト、
 パパイア、ジュース、そしてコーヒー。お約束のベランダでの食事はしっかりと海を眺め
 ながら。


12月14日
 アラモアナセンターをリサーチする、買い物をする気分も予定もなかったが一通り
 ショップを見て回る。 お気に入りのファッション・ショップが複数消えていたことも
 あって、いつも感じる高揚感は全くない。
 フッドコートで、お気に入りの鉄板焼きランチボックスを注文する。
 テーブルエリアには、ワクチン接種証明証とパスポートを提示して入る、密にならないよう
 に気配りして食事する。
 個食のフッドコートランチは余計にわびしく感じるが、
 バラ肉と肉に包まれた玉葱のハーモニーに幸せを感じる。
 今更気が付く、ニンニクと玄米がこんなに美味しかったのか!


12月15日
 ワイキキ滞在も中日になると日本食が恋しくなるのはいつものこと、情けないがこれが
 昭和人間なのだろう。そこで、いろいろと食材を日本から持ち込むことにしている、
 レース直後のスープパスタは必須アイテムになっている。
 朝からカレーライスを調理する、といってもカレーも白米もレトルト。
 日本のカレーライスをワイキキビーチを眺めながらいただく、シュールなお愉しみ。
 グルメと言ってもいいほどの美味しさだった。


12月16日
 もう一度行きたい個性豊かなお店がある、前回(2019年)また来るねと約束したのが
 PAIAフィッシュマーケット。 PAIAはマウイ島から進出してきた日本人経営のお店だと
 聞いているので、応援の気持ちも込めて訪れた。
 前回食べ損ねたフィッシュ&チップスとビールを注文する。
 ビッグ春巻きのようなフィッシュフライがゴロンと3本、たっぷりのポテトと一緒に
 サラダの上に乗っかっている。 タルタルソースをつけてフィッシュフライを頬張る、
 熱々で柔らかくて魚の味が濃厚・・・つまりは超旨。
 個食なので他のメニューは涙をのんで諦め、ひたすらフィッシュ&チップス&ビールに
 取り組む、思い残すことない満足感を覚えた。


12月17日
 滞在最終日は地元で人気の料理をテイクアウトする。
 ブランチはビーチに出店しているキッチンカーで「タコス」、
 夕食はリゾート内ショップで 「ロコモコ」。
 どちらもハワイ風に調理されていて、旅情をいやがうえにも高めてくれるのだった、
 アロハ・オエ さらばハワイよ。


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