55. 《 子供が消える日 》 2023/1/11

文字数 941文字



世界中から子供が消える、ある時から子供が生まれなくなる、それは子供が消えていくこと。
これはシネマのお話、「トゥモロー・ワールド(2006)」は冒頭からの長回しシーンの果てに爆弾テロに至る撮影の妙に震撼した、撮影監督エマニュエル・ルベツキと監督アルフォンソ・キュアロンの最強コンビが主役にクライヴ・オーウェンを擁して製作したディストピアSFは僕にとって長く記憶に残る名作だ。

現在 SFを荒唐無稽な絵空事と切り捨てることが躊躇されるような時代になっている。
大洪水、旱魃、雪と氷で人類が絶滅の危機に追い込まれる破滅未来を描くSF(サイエンス・フィクション)に現実が追い付いてきている、それを気候異常とか地球温暖化と言いくるめるだけで決定的対処策を見いだせない我々人類は、やはり滅亡する運命になるのだろう。

話を戻して、
「トゥモロー・ワールド」の時代設定は2027年、つまり20年後の近未来ディストピアとして、子供が消えていく絵空事になっているが、今年2023年から見ると4年後の物語であり、2020年日本で生まれた子供は84万人、5年連続減少し調査開始以来最小数になり、わかりやすい比較でいうと僕ら団塊世代が生まれた時から三分の一以下(!)になっていると思うと絵空事である「子供が消える」恐怖が現実味を帯びてくる。
シネマの中では地球最後の赤ん坊を主人公が唯一の希望である某組織に送り届ける中で遭遇するエピソードが観どころになっているのだけれど、僕が一番衝撃を受けたのが歴史的文化材(ミケランジェロ、ピカソなど)が無価値になり捨て置かれる設定だった。
継承する相手がいない文化は尊厳を失い、人類の痕跡を伝える意味を失くしたとき人類はただの動物になってしまう。

今、少子化解消政策を長年放置したままの日本が防衛費用を一気に増大させようとしている。
防衛する大切な子供たちが消えていくなか、いったい誰のための防衛なのだろうか?
SFシネマはSFらしい原因不明の不妊蔓延という約束事があったが、幸いにも現実はまだそこまでSFに追いついてはいない。
子供が消えてしまっても日本を守るというのなら、それはまさしく独裁者の思考ではないか。
子供が消えない日本であって欲しいと 祈る、祈ることしかできない 今日である。
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