103.  《 BEFOR /AFTER  緑内障の日 》2023/12/13 

文字数 1,937文字



「緑内障」を英語で言うとGLAUCOMA。
緑内障という言葉は、古代ギリシャの医師ヒポクラテスが、急性の緑内障では眼底が青緑色に見えたことから命名されたと伝えられている。ギリシャ語のglaukos(青緑色)からglaucoma(緑内障)となった。日本では、江戸時代後期に蘭学の翻訳で「緑内障」という言葉が作られたが、
古くは「あおそこひ」とも呼ばれ眼底に障害があって見えなくなる(暗くなる)ことを意味している。

2023年5月15日、ミニシアターから帰宅した午後五時、どうにも右眼がぼんやりしてはっきり見えない。
この一年くらい、陽の光に眼を瞬くことが多くなった、眩しいのではなく何かが眼の中で見ることを邪魔しているような不快感だ。
一年前といえば72歳を過ぎたころ、日本人男性の平均健康寿命を超えたころのことだったが、十年来の脊柱管狭窄症に加えて、膝、股関節の変形が進行していたり、難聴でテレビの音を大きくし家人に注意されたりで、眼の変調への対応が後回しになっていた。
親しい同年齢の友人たちが次々と白内障の手術を受けていたので、そろそろ自分の番になるのかな・・・と余裕をもって構えていた。
安心の根拠は、白内障は日帰り手術で治療できるという友人たちの病気自慢だった、なんだ楽勝じゃないか・・・って。

とはいえ、目にメスを入れるのは怖い、できる限り診断を先延ばしにしていた。
2023年5月15日に感じた視力の不安定さは、その及び腰を思い切り蹴飛ばすほどだった。
間違いなく眼科に行かなければいけないと確信したが、はてどこに行けばいいのか?
眼科には十年近くお邪魔していなかった、その十年前も眼鏡新調のための検眼が目的だった。

勝手に、白内障だと半ば信じているので白内障専門医を捜した。
市内の(近くの)眼科は何処も白内障対応と標榜している、これじゃ区別できない。
口コミ評価も覗いてみた、どこも悪いコメントが書き込まれている、口コミとはそういうものだ。
数少ない高評価コメントがあった、友人が白内障手術を受けたドクターだ。
友人はその後順調に回復しているし、最近開業したとのことだからきっと最新の技術を持っているに違いない・・・そこに決めた。

午後五時半電話する、六時まで受け付けること、予約は不要とのことを確認した。

ここまでがBEFORE のお話である。

2023年5月15日、夕方の眼科医院はかなり混んでいた。
診察の前に、視力眼圧検査を受ける。
左眼圧12は基準内だが右眼圧が28と異常に高いと知らされる・・・眼圧の話?
ということは白内障ではなく緑内障の方かと気づいた、そのくらいの知識はある。
「見えにくいのはこの眼圧のせいだとは思いますが、とりあえず眼圧を下げましょう、お薬を出します」
「視野検査をしてみましょう、4日後にもう一度来てください」

4日後の視野検査では予想通り右眼の上部の視野が欠けていた、予想通りというのは事前に自分で簡単に確認できたからだ。
左目を塞いで右眼だけで見ると上部がかすんでいることは歴然としていた、いま迄これは近眼のせいだと勘違いしていた。緑内障だと理解し納得した。

ここからはAFTER のお話である。

その後7月、9月に定期診断と薬の補充、11月に二回目の視野検査・・・このように2カ月に一度で症状の進展状態を診てもらっている。
結果 右眼圧は28から下がって12~17の範囲で正常を保っている、視野欠如は拡大することなく変わりはなく進行してはいない。
緑内障と診断されて以来6カ月、ドクターから授かった知識をまとめてみた。

●眼圧が高いと視神経組織が壊れて見えない部分(視野欠損)が生じ、放置すれば視力を失う。
●一方、眼圧が低くても緑内障になるケースもある、つまり原因はまだ特定されていない。
●ぼくの場合は 眼圧を下げることに専念し、視野欠損を拡大しない治療。
●70歳を越えると緑内障発症率が高まることは事実(10人に一人の割合)。
●緑内障は実にゆっくりとしたペースで進行するので気づきにくい、通常は40歳代からじわじわと始まっている。

というわけで、いま眼圧を下げる目薬を二種類毎日3回点眼している。
その効果は前述のとおり、眼圧が下がり視野欠損が止まっている、回復はしないが。
その一方で、目薬の副反応が強烈で驚いている、痛いとか沁みるとかではなく眼の周りが黒ずんでくる、よく言えば意図しないアイメイクともいえるが、見た目はちょっと凶暴になる。
その代わりにといっては何だが、睫毛が長くなった、これは可愛らしい。
さてさて、おっかな可愛い眼をした老人を見かけても逃げないでくださいね、それは緑内障治療中なだけなのですから。

相変わらず自分の見てくれしか念頭にないナルシストの 今日である。
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