78. 《 不当を正す日 》 2023/6/21

文字数 1,099文字



「不当」とは、正当・適当でないこと、道理に合わないこと・・・・だそうだ。

いま話題になっているのがこの「不当」が付いた「不当な差別」という文言である。
LGBT法案が「差別は許されない」から「不当な差別はあってはならない」に修正されたところから一躍脚光を浴びることになった。

作家と自称している身として瞬時に、「不当な差別・・・・」という文脈の中に悪臭がこもっていることを嗅ぎ取った。
前述の定義に従えば、「不当な差別」は「正当でない差別」と言い換えることができるから、
「正当でない差別はあってはならない」となり、二重否定だから「正当な差別はある」ということになる。
修正案を出した政党、そしてそれを受諾した政党の本音がチラリ見えてくる・・・「LCBTは差別されても仕方がないんだよ」という本音が。
わかりやすく例えれば、同性婚はまだ法整備されていないので通常付随する夫婦としての権利はない、これを法に基づいた正当な差別という・・・とでも言いたいのだろう。
その背景にある個人より家を核とした旧体制回帰を目論む妖怪の蠢きが気持ち悪い。

そもそも倫理的に考えたとき、「差別」に不当も正当もあるはずもない、どんな差別もイケナイことくらい小さな子供でも知っている。いい年の大人のくせをしてこんな当たり前のことに気づかないふりをしているのかもしれないが、もし本気で正当な差別を信奉しているのだとすれば情けない限りである。
日本人は無類の差別好きだという世界の評価もまんざら的外れではない。

日本憲法14条第1項には、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的 又は社会的関係において、差別されない」と規定されている。
ところがである、
「不当な差別的取扱い」は禁止されているが、「合理的配慮」や「客観的に見て正当な目的の下に行われたもの」、「その目的に照らしてやむを得ない場合」は、正当な差別が認められているのが現在の法律であり、そこには根強い差別社会を背景とした日本文化が潜んでいる。

LGBT法をきっかけにこのような法律条文の現状(不当でない差別)を知ることになった。
前例・慣例主義とアナクロ法文に固執する官僚たちの面目躍如というところだろう。
そして、「あぁ そんな解釈もあるんだ、お上がそういうのならそれも仕方がないね」と、流れてしまう国民が多いことも承知している。

今必要なのは、差別に対する日本国民一人一人の意識改革であり、間違った前例があるのであれば、それを正していく気概と実行力だ。
変だなと思ったら、自分の正義を信じていくことの大切さをしみじみ実感した 今日である。
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