51.《 無欲に向かう日 》 2022/12/14

文字数 1,537文字



買い物が大好き、お金は貯めるよりも使う方が好きという困った性格なのは自分が一番よく知っている。
他人への贈りものも大好き、相手に喜ばれると嬉しいので一生懸命に選ぶ。
でも、どうしても自分のものを優先してしまうのも仕方ないことだろう。
108の煩悩の中でも三毒と言われる「欲」、着道楽ともお洒落とも言われて悦に浸り、物欲に開き直ってきたナルシスト人生だった。

洋服は年金生活を想定した備蓄と称して働き止めまでにたくさん揃えている。
この時季(冬物)についてチェックしてみると・・・
コート、ブルゾン、ジャケットは温暖化になった今では着用機会が少なくなったのは残念だけど、びっしりとラインアップしている。
セーター、パーカー、ジャージはうっかりすると一冬で袖を通すことがない品もあるくらいそろっている。
パンツは近年腹囲拡張で選択肢が減ってきていたが、今年からのストレッチの成果でチャックが閉じれるアイテムが復帰回復し、これまた充実している。
スーツは、さすがにこれからは着ないだろうということで礼装用以外は2着を残してすべて廃棄した、実際にスーツを着る場はない。
ハットはフェルト各色8個、着回しするので痛みも少ない。

靴はトライアスリートの名残から、ランニングシューズを備蓄していたがそれも残り少なくなった。ビジネスシューズはスーツと同じ運命をたどり礼装用を残して廃棄した。
カジュアルもので、ほとんど履く機会のなかったレザーシューズが所在投げに靴箱にいる、そこでレザーの傷・皺の修復作業を始めた、単なる興味からではあるが。
今のところバックスキンシューズが僕のメインユースになっている。

オードパルファンも好きだ。
中学生のころ父のコロン(エロイカという日本製)をこっそり振りかけて愉しんだ体験以来、色々な香りに手を出してきた。
一時期 棚に十数種のコロンが立ち並んでいた、毎日違う香りを周りに振りまく傍若無人な無節制ぶりだった。
今は自分のため、リラックスのための香りに絞り込んだ結果、ファッションブランド系の暖かい香りと、パルファンメゾン系の心安らかな香り二種類に落ち着いた(夏場は爽やか系に衣替えする)。

ブックレビューを書くためと称して本をせっせと買いこんだ結果、積読(つんどく)本が沢山貯まってしまった。それでも「今週の本棚(毎日新聞)に目を通して新刊書購入リストを追加更新している。
その一方、
買い物好きにとっての大きな障害となる年金生活に突入して8年目を迎えようとしている。
以前にも当シリーズ「第13話 お金の切れ目の日」と題して書き記したように、年金生活者には収入がない。
洋服、帽子、靴、コロン、本の備蓄分が枯渇した折に、さてどうするか?
レザーコートが虫食いになったら、そこでおしまい。
フェルトハットに黴が巣食ったら、そこでお別れ。
靴は転倒しない滑り止めが付いたスニーカーに変えるかな。
本はお気に入り作家シリーズを何度も読み返せばいい、どうせすぐ忘れてしまうし、そのうち字が見えなくなるかも。

でも、香りだけは譲れない。
オードパルファンの備蓄は香りが飛んでしまうので考えられない、アイテム自体に廃番・中止も多いのでその都度対応することになる。

どうやら買い物欲望は、オードパルファン一点に集約されるようである。
物欲という厄介なものを制御する方向が見えてきたようで少し安堵している 今日である。

(追記)
「それではお前の大好きなシネマとアルコールはどうするのか?」
というお声が聞こえてきそうだ。
この二つは欲望というよりも本能そのものだから制御することはできない。いずれ身体がその答えを出してくれると思っている。
実際にお酒を飲む量は年々減ってきているし、シネコンの暗闇で転倒してお陀仏になるかもしれない。
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