49.《 孫と過ごす日 》 2022/11/30

文字数 2,151文字



今年夏から孫たちと生活を共にしている。
夫婦と娘の3人暮らしから一変した毎日だけど、核家族も大家族もどちらも良し悪しがあることを改めて気づく、まさに有無同然。
僕自身に関しては、幸いにも働き止め以来家事を少しづつ勉強してきたので、作業量が倍増した点だけが課題だった。すべての課題は解決される、今回は慣れるだけだった。
孫たち三人(高三、高一、小四)と過ごすことまだ3か月ではあるが、彼らからもらったサプライズの数々は冥土の土産となるに違いない。

【コロナ】
コロナ渦も三年目、今年の年末年始を前にまたまた第8波が着々と迫ってきている。
高齢者には優先的にワクチン接種の機会、万が一発症したときも医療がこれまた優先して治療してくれるらしい。 その代わり高齢者は、おとなしく家に引きこもっていなさい・・・というバーター契約だと理解している。
これまでは高齢夫婦だから家で大人しくしていれば、報道で見聞きするような家族全員感染の悲劇などは全くの他人事と思っていた。
高三が咳・喉の痛み・発熱を訴える、念のために用意していた抗原検査キットで陽性の判定が出た。翌日朝 かかりつけ医院で診察の結果、晴れてコロナったとのこと、予想だにしなかったまさかの隔離システムを我が家に作ることになった。
高三を一部屋に隔離し、トイレ・洗面所・タオルも分け食事はすべてドアの外にデリバリーすることにした。
しかしながら、部屋をシェアしていた高一も昼過ぎから高熱になり夕刻に診察してもらって陽性、一朝一夕で二人がコロナった。
二人の診察に付き添った妻がその次の犠牲者かという心配が的中、4日後発熱し検査の結果これまたコロナった、一週間で三人のクラスター(死語?)となった。
幸いにも(?)陽性者交代という形で隔離システムを変えることなく継続している。
さて、次は誰 ?と戦々恐々の 今日である。

【アルバイト】
高三は専門学校への進学が決まっているので、卒業まで時間の許す限りアルバイトするらしい。
今までと違った厳しい学業を前にして気楽な一時期を小遣い稼ぎで過ごしている。
高一もアルバイトして小遣いを稼いでいる、こちらは今から楽しい高校生活を満喫するためだそうだ。
親も学校も許可していると聞いて、祖父は隔世の感を覚えオロオロするだけ。
高校生は一心不乱に勉強して大学受験に備えるというのは昭和の戯言なのか?
少なくとも僕からの助言は役には立たないのだろうということを、残念ながら覚悟する 今日である。

【遊ぶ】
高三は小学生の時はクラブチームで、中学から6年間部活で野球、夏の神奈川県野球大会で野球生活を終えた。
今 12年ぶりに髪を伸ばして楽しんでいる。
いそいそと美容室に向かう前に鏡に向かってドライヤーを振り回しているのが可笑しい。
アルバイト給金で揃えているのはコミック、ずらりと本棚にはシリーズ物が並んでいる。
「すずめの戸締り」を何回も観ている。
僕はシネマファンだけど、アニメを観ない、同じ作品を二度観ない、そもそもコミックが嫌いだ。
趣味がまるで正反対の高三との付き合いに困惑している 今日である。

【Z世代】
小四は起きてから眠るまでタブレット端末を離さない、ほとんどゲームで遊んでいるのだが友達とラインで遊ぶ約束もしている。
兄・姉のコロナ発症に伴い濃厚接触者として欠席を学校に連絡したところ、夕方担任教師が学校のタブレットとプリントを持ってきてくれた。
プリントは宿題らしい、タブレットはリモート授業のためだとのこと、預かってはみたものの僕には操作はわからない。
小四に「これ知ってる」と聞いたら軽く頷かれた。
翌日、8:45からの授業開始時間にはパジャマを着替えマスク(?)までした小四が神妙な面持ちで机のタブレットに向かっていた。

高三から入学書類を郵送したいので、切手はあるか?と聞かれる。
切手を渡したが、なにやらゴソゴソと切手をいじくっている。
「うまく剥がれないんだけど」
「?」 
切手はシールだと思っていたみたいで、裏面を舐めるか水をつけることを知らなかったようだ。
おそらく手紙を書いたことはないのだろう、だから切手を使ったこともない。
メール、ライン、メッセンジャー・・・無料のツールが周りにあればわざわざ手紙を書くこともない。 そういえば、僕だって手紙を書いて送ることは滅多にない、とはいえ切手の使い方は知っているけれど。
デジタルツールの普及を有難く思う一方で、アナログ製品が歴史になりつつあることに寂しさを感じる 今日である。

付録【猫舌】
小四が猫舌だということを知らなかった、それもかなり極端な猫舌だ。
スープ、みそ汁、お茶は勿論 炊きあがり白米も受け付けないことを、この三カ月で目にした。
小四が「熱っ、アツッ、あつっ、ハッ」という時の表情にどこか見覚えがあった。
そうだ、岡田准一さんが演じている殺し屋ファブル、常識がなく絵が下手で猫舌のコミカルな設定だ。
ファブルが熱いものを食べた時のリアクションが、小四のそれとそっくりなのだ。
おかげで岡田さんの役者魂を垣間見た、そして可愛い猫舌アクションを期待してちょっとだけ暖かい食事を用意する 今日である。
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