79. 《 自衛する日 》 2023/6/28

文字数 2,112文字



ジェームス・ボンドも古希に・・・イアン・フレミングによる小説【カジノ・ロワイヤル】が世に出てから今年で70年が経った。
シネマ「007は殺しの番号」がその10年後だから、第一作からお付き合いしてきた007シリーズも還暦ということになる、これまで6人の俳優がボンドを演じ、いま誰が次の7人目を演じるのかを、楽しみに待つ今日この頃である。

シネマのなかのエピソードではあるが、6代目ボンド(ダニエル・クレイグ)が初めて人を殺し、晴れて「007」のライセンスを貰うというシーンを強烈に覚えている。人を殺すことはボンドにとっても耐え難い試練だったようだ。
007ボンドはフィクションの産物だとしても、実際にスパイによる要人暗殺ニュースを聞くと人間の計り知れない暗闇と恐怖が想像できる。

さほど殺人の罪はいつの世どの地域においても重く、現行日本では刑法199条で厳罰に処す旨が明確に記されている。厳罰で殺人を抑止できるかどうかはともかく、人類誕生以来最も重い罪として忌み嫌われてきた殺人。
しかし世の中には常に例外があり、人を殺しても罰せられない特例がある。
前述の007はさて置いて、軍人は敵国軍人の殺人を業務としている。
念のために言っておくと、軍人を殺人者呼ばわりし名誉を傷つけることを意図して本79話を記しているわけではない。なぜなら 彼らは国家の意図に従って殺人を強いられるだけだから。

そんなことをふと考えたのは・・・
2023年6月14日 自衛隊候補生が射撃訓練で教官を射殺したというニュースを聞いたからだ。
事の真実は当事者にしかわかるものではないし、真相が完璧に解明されるとも期待していないが、事件にかかわる個人的見解をどうしても表明しておきたいと思った。

まず今回の事件で「自衛官候補生」という名称が気になり実情をチェックした、詳細については防衛省広報資料を確認していただきたいが、自衛官候補生とは例えれば非正規自衛官(正式な名称ではない)のようなものだと理解した。
敢えて「非正規」の言葉を使ったのは、自衛官候補生制度は現状日本の就職事情にシンクロしていると感じたからであり、つまりは就労者の都合に合わせたかのように好待遇で人を集める求人トレンドなのである。
給与、再就職などに厚い配慮がある一方、労使ともに短期離職を前提としている、その狙いはというと「目先の人員確保」に違いない。

太平洋戦争後78年が経過するも、実質軍隊である自衛隊の基盤が確固たるものではないのは米国占領政策のご都合主義変更矛盾をそのまま引きずってきたからであり、暴力装置である自衛隊を平和憲法を隠れ蓑として災害救援部隊の仮面を被らせてきた歴代政治家の責任である。
自衛のために限って戦力を持つとはいえ、自衛隊はれっきとした軍隊であり、戦場においては敵を殺すことを使命とする。
だから自衛隊員は銃を持ち、常に射撃訓練を怠らない。

今回の事件でキューブリック・シネマ「フル・メタル・ジャケット(1987)」を思い出した。
当該シネマでは普通の青年が殺人マシーンに変わっていく軍事教練の苛烈さ、一方で厳しい訓練なしでは戦場で即座に殺されるという現実、二つの相反するテーマが描かれていた。
訓練兵が指導教官を殺害するのが前半山場であり今回の事件と類似している。後半の舞台はベトナムでの激しい戦闘シーン、戦争の残酷さと同時に軍隊の理不尽を感じ取った記憶がある。

ちょうどいまロシアがウクライナに侵略し蹂躙するのをかたずをのんで見守る自衛隊員が多いはずだ。中国が台湾に侵攻するシナリオも現実味を帯びてきていることを併せて考えると自衛隊員の心は穏やかではないだろう。

軍隊(自衛隊)は国を(国民を)守るために生命を賭して相手を殺害する職業だとすると、そこに非正規人員が紛れている危さは計り知れない。自衛隊人員が常に不足しているのは志願制に拠っているからであり、その一方アイデンティティ不明確な自衛隊に若者に限らず心引かれる日本人は多くない。
員数合わせのためだけに厚遇で非正規隊員を採用する現状、そこから国防の綻びが見えてきた。

まず憲法を変えよう。
自衛隊を国防軍として明記し、そのうえで徴兵制を定めて自分の国は自分で守る常識を取り戻す、もうそろそろ安全保障を外国に頼るパラダイムから抜け出そう。
徴兵制度においては、個人の考えを尊重し徴兵拒否の制度も取り入れる。
その際 徴兵の特典を設ける一方で、徴兵拒否のデメリットはないようにする。
厳重な適正検査を前提とした選考で隊員の質向上を図り、訓練や集団生活におけるセクハラ・パワハラの生じないオープンシステムで陰湿な閉鎖性を排除する。
明確に軍隊と称することは、組織内の規律を高めると同時に犯罪にも厳重に対処することを意味する。早い話が 軍隊構造改革である。

改革は一朝一夕には達成できない、他国からの侵略を目の前にしてからでは間に合わない。
自衛隊を世界一の軍隊組織に変えていく道筋に、もしかして日本全体の復興が見えてくるやもしれない、少なくとも世界の評価は高まるに違いない。

「だったら お前が徴兵に応じたらいい」 と言われれば、
その覚悟はある 今日である。
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