118. 《 興正派の日 》 2024/3/27

文字数 1,562文字



清水寺から三寧坂を下り、維新の道を右に入った坂道に、ひっそりと佇むのが真宗興正派霊山本廟。 京都の観光名所の喧騒のすぐ近くで、詫び寂びの落ち着きを取り戻すことができるのでお気に入りの場所である。
この場所に我一族ご先祖が分骨されている、供養のため何度も足を運んだ。

一般的にはあまり知られていない真宗興正派のことを説明しておこう:
興正派は、親鸞聖人の教えを受け継ぎながらも、独自の解釈や実践を展開してきた宗派、1482年に真宗佛光寺派14世の経豪が本願寺蓮如に帰依し、山科に興正寺を創建したことに始まり、明治9年に独立し、真宗興正派となる。興正派は、浄土三部経を拠りどころとし、本尊は阿弥陀如来。興正派のお寺は香川県に多く、宗旨としては浄土真宗の一派でありながら、大谷派や本願寺派とは異なる独立した派である。

ということでご推察のとおりと想像するが、香川県出身の我が家は真宗の中でも、浄土真宗本願寺派(西本願寺)や真宗大谷派(東本願寺)などの著名な宗派とは一線を画して、特有の解釈と実践を持つ興正派である。
興正派は、親鸞聖人の教えに基づき、「教行信証」の教示を重視し、これにより、阿弥陀仏の名号を聞信する一念に、必ず仏になる身となり、念仏を相続し、報恩行に精進することを教義としている。また、興正派では、浄土三部経と呼ばれる三つの経典を拠りどころとしており、これには以下のものが含まれる。
仏説無量寿経(大経)
仏説観無量寿経(観経)
仏説阿弥陀経(小経)
ちなみに、神奈川県内では興正派のお寺は秦野市の一向寺だけ、檀那寺として毎月の命日供養はじめ、法事一切をお任せしている。
関東地区で探してみても一向寺の他に興正派のお寺は5寺しかないところからメイジャーではないことは明らかだろう。

メイジャーと言えばMLB・・・・お話は急転する。
MLBと言えば大谷翔平選手、今年ドジャーズに移籍しワールドシリーズを戦うか…などの明るい話題一色の春キャンプから韓国シリーズだった。
教育(今日行くところ)も、教養(今日用のあること)も少ない高齢者には絶好のお愉しみになる今年のMLB であったが、その展望は崩れた。
この一週間、聞こえてくるのは「違法賭博」、「6億8千万円送金」、「FBI捜査」、「通訳の供述」、「供述の撤回」、「通訳解雇」、「窃盗で告訴」などなど夢の欠片もない、気持ちが凍りつくような話題ばかりが飛び交い、そのひとつひとつに過敏に反応するファン、ぼくを含めたファンの溜息が苛立ちが日本を覆っていたといってもけっして大げさではない。

3月26日早朝、本人が当事件を説明する姿をTVで見た。
心から信頼していた人間に裏切られたことをきっぱりと表明していた。
結局はそんな犯罪なのだろうと思った、お金に麻痺し賭け事にのめり込んだ結果の背徳行為なのであろう、厚い信頼を食い物にして。


MLBで二度VIPに選ばれるほど野球に集中した大谷選手、友情もサポートも失った中でもこれからも大きな夢に向かって進むしかない大谷選手。
しかし、会見の中で、言葉や表情に怒り恨みの情感を感じることはなった。
おそらく日本中の大谷ファンが安堵したに違いない。

そんなファンを大谷派だとすれば、興正派のぼくは少し異なった意見を持っている。
どのような種類のお金かはわからないが、管理を任せた以上大谷選手にも今回の騒動に責任がある。管理を任せてはいなかったとしても、杜撰なネットセキュリティを放置した責任がある。
一方的善悪の区別で何ものをも軽々しく非難してはいけないと自ら反省もしている、興正派の一人として。

「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」(歎異抄)
親鸞聖人の教えは 大谷派であろうと興正派であろうと同じように貴いものである。

心を込めて「南無阿弥陀仏」を口する 今日である。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み