105.  《 ミステリーを解く日 パート2 》 2023/12/27

文字数 1,522文字



妻の叔父がなくなった、96歳で神のもとに旅立った。
叔父の一人息子から看取りに入ったらしいという連絡を受けてから数カ月がたっていた。
最後の最後まで生命を全うしたのは、信仰の力だったのか、そんな運命だったのか、凡庸なぼくにはわからない。

若い時からキリスト教信者だった叔父は晩年に所属する地元高松の教会にパイプオルガンを寄贈した。某宗教団体で問題になっている過剰献金にも相当するくらいの金額になるだろうと想像する、詳細を知ることもないが。
ご自分でもその教会でパイプオルガンを演奏していたが、さすがに老齢のため近年は演奏も諦めていたようだ。

葬儀はその教会で、寄贈したパイプオルガンの奏でる讃美歌に包まれて執り行われた。
親族は一人息子さん家族3人、妻と妻の妹(いずれも姪にあたる)5人の親族親戚の家族葬だと覚悟していたが、教会の信者さんが20名近く列席してくれた。
叔父の人徳なのだろう、とてもいいお葬式だったと、妻から聞いた。
不思議なことが起きたことを併せて妻から聞いて、ちょっと戦慄してしまった。

前回に引き続き、ミステリーの謎を解き明かしてみよう。

教会に早めに着いた妻、荷物を控室に預け軽食を求めて教会の方に教えてもらったコンビニに向かった。サンドイッチを買い、教会に戻ろうとしたら迷った、ぐるぐる回ってみたが教会が見つからない。スマホGPSで現在位置、教会を調べたがアプリが作動しない。
仕方がないので、従兄弟(一人息子さん)に電話を入れる、「道がわからなくなった、助けて」。

妻のいる場所を確認して従兄弟が迎えにやってきた、一緒に教会に戻ろうとしたら彼も方向が混乱したようで教会に行き着くことができなかった。
二人でアッチコッチと動き回ったあげくに、偶然のように目の前に教会が現れた。

妻の妹は別便で高松に到着し、タクシーで教会に向かった。
ドライバーに教会と地番を伝えた、駅から至近なのですぐに到着するところが同じ道をぐるぐるまわる。教会に到達できないので、ドライバーは会社に電話して場所を確かめ再度動き出す。
数回問い合わせを繰り返した後ようやく妹が乗ったタクシーは教会に着いた。

高松市で10年以上生活した(小・中・高校)ぼくだが、この教会ことは知らなかった。
地図で見る限り昔通っていた高校の近く、市の中心部に位置している。
「こんなところで迷うか?」 と訝しんだ。

ミステリーの謎は・・・「なぜ 葬儀列席者3人は教会にたどりつけなかったのか?」
仮説を立ててみる:
① 妻がぼくをからかってミステリーを捏造した。
② 三人とも認知症の兆候をきたしていて、発症初期に顕著な方角喪失になった。
③ 何かの力が葬儀を妨害しようと、三人の列席を邪魔するため迷子にさせた。

仮説を検証してみよう:
① 妻はリアリストで冗談をいうタイプではないことは僕が一番知っている。
② 三人ともにその可能性は高い、70歳過ぎと70歳直前だから、加えて運転手さんも近年高齢者が多いらしい、でも複数人が同時に発症するものかな。
③ もし小説にするならば、(伯父は類まれなるエクソシストだったので、悪魔たちが葬儀を邪魔した)というプロットもあるが、これはあり得ない。

と、ここでもうひとつの仮説を思いついた。
市の中心部、住宅街にある教会だけに、目立たないことを建築条件にしていたのではないだろうか、なるべく周りの住宅と違和感の無いようにと。
実際に現場にいたわけではないが、我が家の近くの教会もそのような周囲溶け込みを図った意匠なので、おそらくはこの仮説が正解だろう。

謎解き結論:三人ともに迷うべくして迷った、超自然な力はなかった。

ミステリーを体験するより、本当は謎を書き始めたいと思い続ける 今日である。
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