50.《 ストレッチを聴く日 》 2022/12/7

文字数 2,428文字



海老名市では「特定健康診査」と称する公的健康診断が用意されている、70歳以上は基本的に無料なので積極的に利用している。
身長・体重・腹囲の身体計測、血圧測定(2回)、レントゲン検査、心電図、採血検査、尿検査がベーシック、追加で前立腺癌検査、大腸癌潜血検査まで無料になる。
市から送付された受診カードを持参すれば市内ほとんどの医療機関で、この診査が受けられる仕組みになっている。
僕はここ数年、健康診断専門施設(からだテラス)でこの特典を使っているが、今回(2022年度)はその施設が海老名駅開発で新たに建設されたビル内の1フローに移転した、畳もそうだが何事も新しいものは気分がいい。

駅周辺は近年タワーマンションが数多く林立し、その風景が一変している。
7年前開業した「ららぽーと海老名」と駅を結ぶプロムナードに接するビルを目指す、まだ2~4階が埋まっていないので目的の7階へのアプローがエスカレータだけとは高齢者に不親切だと不満たらたらそれでも粛々と上る(反対側にエレベーターがあることを帰途発見する、ゴメン)。

7階の受付スペースがやけに広々としていて入り口に受付券発行機がポツンと置かれている、何度試しても作動しない、故障か? 通りがかりの職員に発券してもらう、故障ではないようだ。
念のため 受付機の前に来る患者をそっとチェックしていると、ほとんどアウトだった、ちょっと安心した。
受付待ちのスペースは広々し過ぎだとすぐに気付いた、おそらくは僕と同じ特定診査を受けに来たであろう高齢者たちが幅50mはあろうかという広大な受付ロビーに点在するソファ、ベンチで思い思いにくつろいでいる。
受付カウンター係が券に記された受付番号(3桁だった)を呼びあげる・・「・325番の方どうぞ」・・・という風に、残念なことにマイクではなく肉声で。
広いロビーに散らばっている受診者でこの呼びかけに応えた者は僕を除いて一人もいなかった。
僕の耳にはワイアレスイヤフォンタイプの「会話サポート器」がしっかりとはめ込まれている (47話.耳を澄ませる日 参照)。
今日が初めてのサポート付き外出だ。
まだまだ装着には慣れていないので世の中の雑音も一緒くたになって聞こえるのがうっとうしいが、受付番号がクリアーに聞こえてきた、増音というより正しくは精音機能に近いようだ。
脳が新しい聴音スタイルに慣れてくるのに1~3か月かかるとの説明ではあったが、その予感を実感した瞬間だった。

有難い無料健康診査だが、ここ数年鬱陶しくなってきたのは、診査結果が毎年劣化してくるからだ。
この年になって身体が毎年改善されることがないことはよ~くわかっているが、それでも身長が縮み、体重が増え、血圧が上がるのは面白くない。その場でわかる結果はそのほかに腹囲がある、全く無意味な検査数値だと信じているだけにこいつが増えるのは余計に癪に障る。
その点、血液検査、尿検査は後日結果が知らされるのに加えて、異常値に対する具体的なリアクションが定かでないのでさほど気にならないのと対照的である。
今年の診査で、とうとう身長が170㎝を切った、これで計3㎝以上の縮小だ、体重は65㎏で0.5㎏増量したのに。
ところが、無意味だと信じている「腹囲」が前回より5㎝減少していた、計測者も怪訝な面持ちで「もう一度計りますね」と僕のお腹に手を回す。
二回目も同じく5㎝減、僕も息をひそめているわけでもなく、どちらかというと無意味な計測に反発して腹を膨らませていたのだけど。
「何かとくべつなことしてますか?」
・・・「福井に旅行しました」・・・というオヤジギャグは封印して
「ダイエットを少し、でも体重は増えてるんですよね」
「体重が増えて腹囲が減るのはいいことです」
「へぇそうなの~? そりゃーありがとうございます」
ほぼ意味のない会話ではあるが、若い女性(だと思うマスク顔)とお話をした貴重な思い出になった2022年度特別健康診査だった。

ところで、
腹囲が5㎝減ったのにはちゃんとした理由がある。
診査で証言した通り、原則として昼ごはんはヨーグルト程度にしダイエットしてるつもりだ。
しかし運動総量が絶対的に減っているので,ランチ抜きダイエット効果はなく前述の通り体重は昨年よりも増えている。
今年からマラソンレースを卒業し、好きな時に好きな時間ジョグするFREE JOGにしたのは、股関節、膝関節不具合が限界に近くなったと自己判断したからだ。その結果 走りの距離で比較すれば昨年の約半分になっているし、その強度に至っては十分の一くらいだろうか。
その穴埋めとして、日課にしているのがストレッチング。

その概要はと言えば、いつ崩壊してもおかしくない故障部位の「ケア」と、まだこれからも使うぞというインナーマッスル「強化」。
消極的願いの「ケア」、積極的意欲の「強化」、毎日1時間半のふたつのストレッチが腹囲を5㎝減少させたようだ。

毎朝起床して そのまま寝床でウォーミングアップとして体を動かせるようになるための「ケア」ストレッチを始める、
脊柱管狭窄緩和を目的とした背骨コンディショニングメソッドから3種類、
肩鍵盤断裂修復手術リハビリ理学療法士メニューから3種類、
股関節リハビリ理学療法士メニューから3種類。

その後布団から這い上がり会話サポート器を装着して体温を測り、完了ビープー音が聞こえるアラーム集音モードで機器機能を確認したのち朝食の準備に取り掛かる。

朝食後の「強化」ストレッチではお腹、腰回りのインナーマッスル5種類、
上腕、大胸の筋トレメニュー5種類、
朝食を挟んでストレッチルーティン二種を消化するのが一日の始まりになった。

パート「ケア」で関節の軋みがポキポキと音を立てる。
パート「強化」では、関節の軋み音がパッキン・ポッキンと耳の奥でで大きく響く、
増幅され精選された骨音が単調なストレッチを賑やか華やかにする。
毎日ストレッチを聴くことで体の調子を慮る 今日である。
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