94. 《 ユメオチの日 》 2023/10/11

文字数 2,044文字



(1)CINEMA
シネマのトリックに「夢オチ」というのがある。
ざっくりと定義すると、物語りが実は誰かの夢あるいは妄想だった、という手法である。
シネマがフィクションであることを考えれば、「夢オチ」はある種だまし討ちの様ではあるが立派なエンターテイメント作法だと思っている。
シネマの最後で大きく裏切られることが嫌な鑑賞者もいるだろうが、ぼくはこの手のものを好ましく思っている。シネマのクオリティ次第とはいえ、「夢オチ」作品は例えれば日常の怠惰を一掃してくれる背徳の喜びにも相当すると理解しているからだ。
ただ、最初から「夢オチ」だとわかっていればその効果がないので、事前のネタバレには厳重注意が肝要である。
一番印象的だった夢オチシネマは「ステイ(2005)」、当然個人の感想であり実は夢オチシネマには名作が数多いので意見の分かれるところだろう。もしこれから「ステイ」を観ようと思う方はには、大変申し訳ないネタバレになった、お許しくだされ。
だからそのほかの名作夢オチシネマについてはここでは触れないままで置く。

(2)NIGHTMARE
ぼくが毎晩夢を見ること、それもたくさんの悪夢を見ることは以前お伝えしている(エピソード6 ナイトメアの日)。
トライアスロンレースの悪夢は、さすがに毎晩見ることはなくなったが、それでも時々壊れたバイクでトランジッションを出て途方に暮れる夢を見る。
現在見る夢は「お仕事関係」が多い、過去に経験したこともないような嫌な会社、嫌な人物、嫌な商談などがテーマになってうなされる。夢なので、全く辻褄があっていない非合理的状況・会話・行動ばかりだから、目覚めた時はドット疲れを感じることが多い。
どんなに気分の悪い夢であっても、目が覚めると現実ではないことを確認して安堵の息を深く吐く、ぼくのナイトメアは逆転のカタルシスでもある。
しかしふと思う・・・人生の三分の一を眠るとすれば残り三分の二がリアルな人生だと自信をもって信じていいものか? と。
毎夜の眠りの中の物語りこそが本物の人生だとしたら、どうする?
果てしない宇宙に秘められたパワーがぼくの夢を、ぼくの現実を操っていたとしたら、どうする?  おちおち夢を見て目覚めることができなくなった。
これは ユメオチ(オチ)。

(3)JERA
阪神タイガースファンである、年季の入ったファンである、1985年日本一をリアルで応援し祝勝したファンである。
今年  岡田監督が戻ってきたのを機会に、昔のような濃~いファンに戻った。
現時点ではセリーグでぶっちぎり優勝してCS、日本シリーズへ待機中である。
阪神戦をほとんどTV応援してきたなかで、気になったのがヘルメットや球場で目に付くJERAというロゴだった、これはなんだろうって?
そんな折にシネコンでは珍しい企業CFを観るようになった、スポンサーはこれまたJERA 。
シネコンでのCFスポンサーは地元企業 行政が多く、表現は悪いが安手の映像の場合がほとんどである。
JERAは違う、かなり秒数もあり映像も上質なCFに仕上がっている。
CFが申すには、「JERAは排出CO² ゼロの革新的手法で地球温暖化に取り組んでいる」とのことだ、ご同慶の至りだと思った。
毎週2~3回シネコンの暗闇に座りJERAのメッセージを聞いているうちに、おかしなことに気づく。
「電気はCO²を排出しないが電気を作るときにCO²を出す、JERAは石炭の代わりにアンモニアを燃やしてCO²を出さない」と言い切っている、と聞こえたが、何度も聞くうちにわかったのは、「JERA はそれを目指している」ということだった。
「おいおい・・・」と思った。
目指すのは大いに結構、地球温暖化に真剣に取り組むのは今では人類共通のミッションだから、JERAも本気で取り組んで欲しい。
問題なのは、目指す事を大仰に、あたかもほぼ達成しているかのように広告宣伝することだ。特に企業広告は企業のアイデンティティを謳うもの、そこに一片の誤解要素もあってはならない。
それからというもの、お目当てのシネマが始まる前のJERA・CFが苦痛でしかなくなった、席を立つわけにもいかないので目を閉じ耳をふさいでいる。
10月5日、同じ想いの人たちから当該CFは日本広告審査機構(JARO)に訴えられた、グリーンウォッシュであるとして。
人も企業も夢を持つことは大切だ、夢と現実を混同さえしなければ。
ましてや 夢を意図的に拡大解釈運用すると、人も企業も苦境におちいる。
これは ユメオチ(イル)。

(4) I HAVE A DREAM
ぼくには夢がある、まだまだ夢を抱いている。
80歳になったら、最後のフルマラソンを走るという夢だ。
それまで元気でいること、少しづつでも走り続けることを心掛けている。
無理な夢だと思えば無理のままに終わる、といって何としてでも夢を叶えると思えば、気持ちが高じて夢の行く先が落ち着かない。
これは ユメオチ(ツカナイ)。

「ユメオチ四題噺」で寛ぐ 今日である。
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