46.《 レジェンドの日 》 2022/11/10

文字数 961文字



眼の奥に戸惑いをひそめながらも呼吸を止めて引き金を絞る男。
友の激励を聴きながら列車の座席で男泣きする武骨な男。
何も語ることなく黙々と調理する男。
鈴なりの黄色いハンカチに向かって歩きだす男。

日本の男を演じ続けた高倉健、僕にとって正真正銘のレジェンド。
東映所属時代のプログラムピクチャーに接した学生時代、オールナイト興行と称したヤクザものが主だった。
その時代の作品を貶めるつもりは毛頭ないが、1976年独立後の作品は彼の熱い思いが観る者の胸を打つ一級作品ばかり。
冒頭に挙げたにシネマシーンは、「駅 ステーション(1981)」、「遥かなる山の呼び声(1980)」、「居酒屋兆治(1983)」、そして「幸福の黄色いハンカチ(1977)」のなかで心に刻み込まれたもの。

レジェンドである所以は、私生活のエピソードからも。
チャン・イーモウ、ビート・たけし、千葉真一、小林稔侍、長嶋茂雄・・・・彼を慕う多くの著名人は数えきれない。
日本エッセイスト賞を受賞した「あなたに褒められたくって(1993)」は僕がエッセイを書く目標となっている。
不本意ながら江利チエミと別れ、死別した後も亡き妻を忘れることはなく命日に墓参りしていた。
晩年パートナーだった女性を妻ではなく養子として籍に入れたのもチエミへの愛情からだと思いたい。

あれほどに、銀幕の中で「いい女」たちと付き合えたのも、チエミが彼を天国から優しく応援していたからに違いない。
加賀まりこ(八甲田山)、倍賞千恵子(幸福の黄色いハンカチ、遥かなる山の呼び声、駅ステーション)、吉永小百合(動乱)、加藤登紀子・大原麗子(居酒屋兆次)、いしだあゆみ(駅ステーション、夜叉)、浅丘ルリ子・宮沢りえ(四十七人の刺客)、大竹しのぶ(鉄道員ぽっぽや)、田中裕子(夜叉、ホタル、あなたへ)、
キラ星のような素晴らしい女優さんたちとの共演も僕は決して忘れることはないだろう。

高倉健と親しい方を通して僕宛のサイン入りのポートレートを頂戴した、僕がディープなファンだということを聞いてのご厚意だと聞いた。
恐れ多くてこちらからお願いすることもできない面倒事を先取りして気を配る、いかにも高倉健らしい・・・サインと写真は今では宝物になっている。

11月10日 小田剛一(高倉健)が世を去ってはや8年が経った、 今日である。
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