第2話  同窓会

文字数 1,036文字

 今年も高校の同窓会の通知が来たが、欠席と書いて返信した。

 昨年の同窓会では、医師の樺島と五菱自動車に勤めている秋元から散々馬鹿にされた。

 樺島は、父親の病院で医師として働いている。
 その病院は父親が開院し、近隣でも大病院と言われるほどに規模を拡大していた。
 樺島は、その跡取りだ。

 秋元が勤めている五菱自動車は、日本の最大企業グループである五菱グループの主要企業の一つだ。

「おい、山科、お前、俺の病院には全く挨拶に来ないじゃないか。薬、仕入れてやらないぞ。あぁー」

「おい、お前、毎年同じスーツだな。それじゃあ、俺の会社の車なんか永遠に乗れないだろうな。アハハハ」

 酒が入るといつもこの調子だ。俺は苦笑しながらスルーするのが常だ。

 そして、こんなときは誰かが、

 「 おい、やめろ! 失礼だろう。山科、こんな奴ら気にするな。さあ飲もう」

 と、言ってくれたのだが、去年は、そう言ってくれた同級生は誰も来なかった。

 出席していたのは羽振りのいい奴ばかりで、俺たちの話は聞こえない振りをして、ゴルフのスコアやキャバクラの話に興じていた。

 ( 変わるのは女だけじゃないな・・・)

 同窓会が終わり、俺はアパートに帰り、エアコンのスイッチを入れる。
 蒸し暑い夜だったが、部屋が狭いから直ぐに涼しくなった。

 一張羅のスーツにブラシをかけ、シャワーにかかり石鹸で体を洗い、パジャマに着替えてベッドに横たわる。

 ( 風呂もエアコンもあって良かった・・来年はもう行くのはよそう・・・)


 あれからちょうど一年が経った。
 朝起きて、俺一人だけの静かな部屋を見回した。
 徐々に目が醒めていきながら、ぼんやりとしていたが、ふと、去年来なかった同級生のことを思い出した。

 その後、日々の生活に埋没して連絡を取ることもなかった。
 電話番号や住所も聞いていなかった。
 卒業生名簿から調べることは出来るだろうが、そこまで積極的にしようとは思わなかった。
 特に親しかったわけでもない。

 こうやって、同級生とも段々疎遠になっていくんだろうな、と少し沈んだ気持ちになった。
 しかし、急がないと会社に遅れる。
 いつもの生活がまた始まった。

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