第40話  竹田製薬工業の再生~警察発表

文字数 883文字

 臨時株主総会の前日、警察は記者会見を行い、今回の一連の大掛かりな摘発についての発表を行った。

 横領罪、背任罪、偽計業務妨害罪など次々と罪名と逮捕された容疑者の数が明らかにされた。
 記者たちは、内心驚きながらも冷静に警察発表をPCに打ち込んでいたが、最後に発表された罪名を聞くと、一瞬に騒然とした雰囲気へと変わった。

 質疑応答が始まると、我先にと手が挙がった。

 「【 企業技術漏洩防止法 】つまり、【 産業スパイ防止法 】違反容疑による逮捕なんですね?」

 「そうです」

 「産業スパイ防止法の他にも、幾つもの容疑による逮捕が行われていますが、今回の大量検挙は、公判を維持できる十分な証拠があってのことなんでしょうか? 」

 「当然です」

 「産業スパイ防止法についてですが、流出先は国内ですか、それとも国外ですか?」

 「今回、直接、捜査の対象としたのは国外の企業です」

 「素人考えでも、国外企業の犯罪を立証するのは、困難だと思われますが、日本国内に支店などを持っている企業ですか?」

 「日本に支店や営業所などはありません」

 「それでは、なおさら立証は困難ではないでしょうか。今回の容疑者の逮捕は見切り逮捕ではありませんか? 容疑者の供述を得る自信があるということですか?」

 「産業スパイ防止法違反を含む今回の一斉検挙で逮捕した全容疑者が、罪を認め、自供しています。事務処理が終わり次第、送検の予定です。これ以上は、申し上げられません。これで会見を終了します」

 「先ほど、『今回、直接、捜査の対象としたのは国外の企業』だと言われました。他にも国内企業に違反容疑があるということですか!?」

 「・・・・・・・」

 警察官たちは、これ以上何も言う事なく会見場を去り、記者たちは慌ただしく新聞社やテレビ局へと帰って行った。

 その日の夕刻、街には号外を配る新聞社の社員が溢れ、テレビ局は、わずか3年前に施行された産業スパイ防止法違反容疑による一斉検挙、さらに、企業機密の流出先が国外企業だと云う事、容疑者は全員が罪を認め、自供をしたと云う事など信じられないようなニュースに沸き立った。
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