第8話  同胞の回想~地球への旅路(合一) 

文字数 1,044文字

 〔 合一(ごういつ) 〕とは
 宇宙生命体がエネルギーを補充するために、他の生命体(例えば人間)の中に入ること。
 他の生命体の中にいる間は、まどろんでいる状態
 エネルギー補充が終了したり、合一した生命体に死期や危険が迫れば、覚醒してその生命体から離脱出来る。

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 いくら私たちでも、すぐには地球にたどり着けなかった。

 宇宙空間を旅するとき、大量の宇宙放射線から自分を守るためにバリヤを張って移動しなければいけない。
 また、途中何度もワープする必要がある。
 生存のためのエネルギーも必要だ。
 これらのことから、かなりのエネルギーを消費してしまうのだ。
 
 そのため、途中でエネルギーを補充する必要があり、進路上の適当な星に寄ってエネルギーを補充しながらの旅だった。
 大気圏があれば、宇宙放射線はかなり軽減されるので、その星の表面にしばらく(とど)まっていればいいし、大気圏が無くても地下に潜ればよかった。

 そのため、最初の一億年は観光気分で余裕だった。

 でも、段々と厳しくなっていった。
 エネルギーの補充に時間がかかるようになってしまったからだ。
 全員のエネルギー補充が完了してから出発していたので、次の一億年はなかなか進めなかった。

 効率的なエネルギー補充の方法を色々と試すことになった。
 その中の方法の一つが合一(ごういつ)だった。
 立ち寄った星の生命体の中に入ると、エネルギーの充填(じゅうてん)速度が飛躍的に速まったのだ。

 合一は、別の生命体の中に入って、しばらく休む感覚だ。
 うとうとしながらテレビを見るように、その生命体の生活を見ているんだけれど、その生命体に命の危険があったり、死期が近づくと私たちは覚醒して、その生命体から離脱できる。
 合一してエネルギーが十分充填された場合も、朝に目が醒めるように覚醒して離脱できる。

 そうやって、十年も合一していたら、エネルギーが十分に充填されて、次の星へ向かうことができるようになった。

 でも、それも、さらに一億年が経つと事情が変わってきた。

 あまりにも別の生命体に馴染んでしまって、覚醒できずに死んでいく同胞が増えていったからだ。
 それでも、まだ死ぬ直前には必ず弱く覚醒した。
 そのとき、死に行く同胞は、その悲しみを生きている同胞全員の胸に思念で伝えた。
 それを感知するたびに、悲しみと辛さで胸がいっぱいになった。
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