第79話 遥~互いの打算
文字数 1,573文字
秋元は、翌日やって来た。
二日続けて来るとは思っていなかったので、遥もやや驚いたのだが、もしや自分に会いたいためではないかと、密かに期待し、その自信もあった。
終業時間が近づいていたが、受付カウンターには、三人のスタッフが並び、他の二人はそれぞれ来客の対応をしている時であり、秋元は予想どうり、遥を見つめながらカウンターまでやって来た。
「前の喫茶店にいます。仕事が終わったら、来てくれませんか?」
遥にだけ聞こえる小さな声だったが、いきなりの誘いだった。
「はい、かしこまりました」
遥は、事務的にだが、満面の笑みで応えた。
仕事が終わると、念入りに化粧を直して喫茶店に向かった。
秋元は、窓際の席に座り、遥を待っていた。
遥と秋元は、それぞれ昨日初めて会った時の互いの印象や仕事の内容などを話した。
秋元は、歯の浮くような世辞を並べて遥をほめたのだが、遥は悪い気はしなかった。
実際、美人ぞろいの受付スタッフの中でも自分が一番美しく魅力的だと云う自信があった。
秋元は、新しいカーデザインプロジェクトの一員に選ばれたことも話した。
新入社員としては異例の抜擢だった。
(これは当たりね)
遥は、秋元の話を終始笑顔で聞きながら内心思ったのだった。
翌日もデートの約束をした。
都内の高層ビルにある一流レストランでのディナーだった。
高層ビルから光に輝く東京の街をうっとりと眺めながら食事を楽しんだ。
拓馬とのデートでは考えられないことだった。
レストランを出て、近くにある公園を二人で歩いた。
寄り添って歩いていると、ふと二人の目が合い、そのまま秋元に抱かれるようにしてキスをした。
しばらくして、互いに相手の腰に手を回したまま二人は公園を出た。
公園を出ると二人の目の前には、ラブホテルのネオンがいくつも並んでいた。
遥は、一瞬、緊張したが、そのまま秋元とラブホテルの一つに入った。
遥は、処女だった。
遥が処女だと分かった時の秋元の驚きと喜びようは大変なものだった。
感動して遥をほめ讃 える秋元を見ながら、
(博打だったかもしれないけど、正解ね)
三ヶ月後、遥が妊娠していることが分かった。
秋元は、遥と結婚する気は無かった。
年齢もまだ大学を卒業したばかりであり、遊び足りなかったのだ。
秋元は、高校までは公立だったが、大学は京王義塾大学であった。
世間では、京王ボーイといえば、金持ち、イケメン、家柄や育ちが良いなどのイメージが定着しているが、秋元の外見は正にそれを体現しているようだった。
父親も一流企業の重役であり、親戚にも成功者や金持ちが多い。
合コンがあれば、常に参加した女性たちから質問が集中した。
大学入学と同時に高級ソープで童貞も卒業し、それ以来プロアマ問わず、何人もの女性と関係を持ってきた。
ただ、素人の女性との付き合いは、一度きりか、精々1、2ヶ月ぐらいで、深みにはまる前に別れた。
遥との関係も、ただの遊びのつもりだったし、避妊にも注意していた。
だが、処女を相手にしたのは、実は、遥が初めてだった。
そのため、三ヶ月も関係を続けてしまったのだ。
遥は、産む気だった。
正式に婚約もしたいと考えていた。
それを悟った秋元は、中絶を勧める前に冷静に損得を考えることにした。
遥の父親は、五菱商事の重役と親密なコネがある。
五菱商事には、大学時代から世話になっているOBの先輩がいる。
この先輩は、遥の上司の総務課長だ。
ここで、無理に中絶させれば、後々問題がこじれたとき、同じ五菱グループである秋元の会社内で不利になる可能性があるかもしれない。
それに、遥は美人だ。年齢的には少し早いし、もっと遊びたいのが本音だが、俺の結婚相手としては、まずまずだろう。
こう思った秋元は、遥に結婚を申し込むことにした。
二日続けて来るとは思っていなかったので、遥もやや驚いたのだが、もしや自分に会いたいためではないかと、密かに期待し、その自信もあった。
終業時間が近づいていたが、受付カウンターには、三人のスタッフが並び、他の二人はそれぞれ来客の対応をしている時であり、秋元は予想どうり、遥を見つめながらカウンターまでやって来た。
「前の喫茶店にいます。仕事が終わったら、来てくれませんか?」
遥にだけ聞こえる小さな声だったが、いきなりの誘いだった。
「はい、かしこまりました」
遥は、事務的にだが、満面の笑みで応えた。
仕事が終わると、念入りに化粧を直して喫茶店に向かった。
秋元は、窓際の席に座り、遥を待っていた。
遥と秋元は、それぞれ昨日初めて会った時の互いの印象や仕事の内容などを話した。
秋元は、歯の浮くような世辞を並べて遥をほめたのだが、遥は悪い気はしなかった。
実際、美人ぞろいの受付スタッフの中でも自分が一番美しく魅力的だと云う自信があった。
秋元は、新しいカーデザインプロジェクトの一員に選ばれたことも話した。
新入社員としては異例の抜擢だった。
(これは当たりね)
遥は、秋元の話を終始笑顔で聞きながら内心思ったのだった。
翌日もデートの約束をした。
都内の高層ビルにある一流レストランでのディナーだった。
高層ビルから光に輝く東京の街をうっとりと眺めながら食事を楽しんだ。
拓馬とのデートでは考えられないことだった。
レストランを出て、近くにある公園を二人で歩いた。
寄り添って歩いていると、ふと二人の目が合い、そのまま秋元に抱かれるようにしてキスをした。
しばらくして、互いに相手の腰に手を回したまま二人は公園を出た。
公園を出ると二人の目の前には、ラブホテルのネオンがいくつも並んでいた。
遥は、一瞬、緊張したが、そのまま秋元とラブホテルの一つに入った。
遥は、処女だった。
遥が処女だと分かった時の秋元の驚きと喜びようは大変なものだった。
感動して遥をほめ
(博打だったかもしれないけど、正解ね)
三ヶ月後、遥が妊娠していることが分かった。
秋元は、遥と結婚する気は無かった。
年齢もまだ大学を卒業したばかりであり、遊び足りなかったのだ。
秋元は、高校までは公立だったが、大学は京王義塾大学であった。
世間では、京王ボーイといえば、金持ち、イケメン、家柄や育ちが良いなどのイメージが定着しているが、秋元の外見は正にそれを体現しているようだった。
父親も一流企業の重役であり、親戚にも成功者や金持ちが多い。
合コンがあれば、常に参加した女性たちから質問が集中した。
大学入学と同時に高級ソープで童貞も卒業し、それ以来プロアマ問わず、何人もの女性と関係を持ってきた。
ただ、素人の女性との付き合いは、一度きりか、精々1、2ヶ月ぐらいで、深みにはまる前に別れた。
遥との関係も、ただの遊びのつもりだったし、避妊にも注意していた。
だが、処女を相手にしたのは、実は、遥が初めてだった。
そのため、三ヶ月も関係を続けてしまったのだ。
遥は、産む気だった。
正式に婚約もしたいと考えていた。
それを悟った秋元は、中絶を勧める前に冷静に損得を考えることにした。
遥の父親は、五菱商事の重役と親密なコネがある。
五菱商事には、大学時代から世話になっているOBの先輩がいる。
この先輩は、遥の上司の総務課長だ。
ここで、無理に中絶させれば、後々問題がこじれたとき、同じ五菱グループである秋元の会社内で不利になる可能性があるかもしれない。
それに、遥は美人だ。年齢的には少し早いし、もっと遊びたいのが本音だが、俺の結婚相手としては、まずまずだろう。
こう思った秋元は、遥に結婚を申し込むことにした。