第53話 東京メディシンの改革~社長就任
文字数 1,118文字
俺は、臨時取締役会が開催されている時、隣の控室で、会議の様子をモニターで見ていた。
俺の隣には、今年60才で停年退職した尊敬する前営業課長の中島洋介氏が座っていた。
俺は、会議が紛糾した時、証言を頼むと言われて控えている。
中島氏も同様だった。
さらに、俺は、会議で決定されるまで、決して選任予定の役職者については、誰にも口外しないようにと言われていた。
中島氏にもだ。
まあ、そうだろう、念のためと云う事だな。
中島氏には、事前に了承を得ていないが、臨時取締役会で決定された後でも、きちんと事情を話せば、中島氏は許してくれるだろう。
なにせ、東京メディシンが再生するか、破綻へ突き進むかの別れ道だ。
この臨時取締役会は、必ず成功させなければいけない。
竹田社長たちが、慎重になるのは分かる。
竹田製薬工業の武闘派は、10年以上の間、敵対派閥に勘づかれないよう実際に戦ったのだ。
俺のようなずるを使ったんじゃない。
俺は、素直に竹田社長の指示に従った。
しかし、あと一人、常務取締役に選任予定の人物が来ていないが、日程の都合でも悪かったのだろうか。
泥沼コンビが連れ出された後、新しい社長と常務の選任の提案があった。
「・・そんな・・話が違う・・・」
俺は、図らずも末田と同じ言葉を言ってしまった。
俺は、どうしても必要と思う時以外は、人の頭の中を覗くことはしない。
しかし、こんな事なら、竹田社長の真意を覗いておくべきだった。
後の祭りだ。
俺の人事案では、社長には中島氏、常務には他の人間を推薦していた。
ところが、臨時取締役会で代表取締役に俺、常務に中島氏が決定してしまったのだ。
本人の了解なしでいいのか?
事後承諾はしないぞ。
・・無駄な抵抗だった・・・
同室の竹田製薬工業の社員が、いつの間にか大勢になっており、一斉に歓声と拍手が挙がった。
その場にいた人たちから次々と祝辞を述べられ、握手を求められて、断るに断れない事態になってしまった。
そのうえ、社長室長と総務部長、それに人事部長とその他の社員たちから、俺と中島氏は取り囲まれて、臨時取締役会が開催されている会議室へと案内(連行)された。
そこには、いつの間にか五菱商事の弥一郎社長と荘田副社長、国内商事部門本部長の吉岡孝太郎氏も来ており、竹田社長らとともに満面の笑みと拍手で俺たちを迎えた。
完全に嵌 められた。
この期に及んで、どうやったら断れると言うんだ。
中島氏は、終始呆然自失であった。
その日の夜、帰宅した俺は、母さんに「何か工作したんじゃないのか?」と尋ねた。
「する訳ないでしょ!」と怒り出した母さんに謝りながら、ビールとA5ランクの肉でお祝いをした。
俺の隣には、今年60才で停年退職した尊敬する前営業課長の中島洋介氏が座っていた。
俺は、会議が紛糾した時、証言を頼むと言われて控えている。
中島氏も同様だった。
さらに、俺は、会議で決定されるまで、決して選任予定の役職者については、誰にも口外しないようにと言われていた。
中島氏にもだ。
まあ、そうだろう、念のためと云う事だな。
中島氏には、事前に了承を得ていないが、臨時取締役会で決定された後でも、きちんと事情を話せば、中島氏は許してくれるだろう。
なにせ、東京メディシンが再生するか、破綻へ突き進むかの別れ道だ。
この臨時取締役会は、必ず成功させなければいけない。
竹田社長たちが、慎重になるのは分かる。
竹田製薬工業の武闘派は、10年以上の間、敵対派閥に勘づかれないよう実際に戦ったのだ。
俺のようなずるを使ったんじゃない。
俺は、素直に竹田社長の指示に従った。
しかし、あと一人、常務取締役に選任予定の人物が来ていないが、日程の都合でも悪かったのだろうか。
泥沼コンビが連れ出された後、新しい社長と常務の選任の提案があった。
「・・そんな・・話が違う・・・」
俺は、図らずも末田と同じ言葉を言ってしまった。
俺は、どうしても必要と思う時以外は、人の頭の中を覗くことはしない。
しかし、こんな事なら、竹田社長の真意を覗いておくべきだった。
後の祭りだ。
俺の人事案では、社長には中島氏、常務には他の人間を推薦していた。
ところが、臨時取締役会で代表取締役に俺、常務に中島氏が決定してしまったのだ。
本人の了解なしでいいのか?
事後承諾はしないぞ。
・・無駄な抵抗だった・・・
同室の竹田製薬工業の社員が、いつの間にか大勢になっており、一斉に歓声と拍手が挙がった。
その場にいた人たちから次々と祝辞を述べられ、握手を求められて、断るに断れない事態になってしまった。
そのうえ、社長室長と総務部長、それに人事部長とその他の社員たちから、俺と中島氏は取り囲まれて、臨時取締役会が開催されている会議室へと案内(連行)された。
そこには、いつの間にか五菱商事の弥一郎社長と荘田副社長、国内商事部門本部長の吉岡孝太郎氏も来ており、竹田社長らとともに満面の笑みと拍手で俺たちを迎えた。
完全に
この期に及んで、どうやったら断れると言うんだ。
中島氏は、終始呆然自失であった。
その日の夜、帰宅した俺は、母さんに「何か工作したんじゃないのか?」と尋ねた。
「する訳ないでしょ!」と怒り出した母さんに謝りながら、ビールとA5ランクの肉でお祝いをした。