第七十二段 帰る波かな
文字数 425文字
伊勢の国に住む女
に、(斎宮とは言ってないところにご注目!)
一度しか逢えなくて、二度めがないまま、隣の国に行くことになって、
「逢ってくれなかった。冷たい冷たい」
と恨みごとをさんざん言った。
そんなん、あんたが行くからいかんのでしょー。
あたしのせいじゃないよー。
まあ、業平くんのせいでもないんだけどね。お仕事だから。
あたしの歌。
うらみてのみもかへる浪かな
大淀の
松
つまりあたしが、辛くあたったわけじゃないでしょ?待っ
てるのはあたしのほう。なのに、
浦
しか見
ないで/恨み
ごとばっかり言って、お帰りになる波さん。
大淀は、斎宮の御所から近い港。きれいな水とみごとな松原で有名。
(第七十段で業平くんが「海人のつり舟」の歌を詠んだ場所です。)
わりと気に入ってもらえたみたいだった。えへ。
いまでも「井筒井筒、『うらみてのみ』ごっこしよう!」と言って、お風呂でざばざばお湯をかけてくることがあります。