第三段 ロミオる ※ちょいエロ
文字数 665文字
「前見たと思うけどよく覚えてない。見てないかもしれない」って言うから。
いちばん有名なゼフィレッリ監督のやつ。
というか、オリビア・ハッセーがジュリエットのやつ。
あの映画でいちばん有名なのは、まちがいなくあのシーンだ。
ジュリエットがベッドの上でころんところがった瞬間、それまで体に巻きつけていたシーツがほどけて、何かとっても素敵な真っ白くてまあるいものが二つ……!
時間にして0.5秒くらいなのだが、まちがいなく全世界の男子たちを、そして女子たちをもとりこにした。
ところが、業平くんのツボはそこじゃなかったのだ。
「ロミオが、ずぼん穿こうとして、よろけるんだよ」
「え?」
「よろけるの。こんな」再現して見せてくれる。「あっ、みたいな」
そんなシーンあったか?
「
「大事?」
「大事だよ」
真顔。
「膝が笑うって、もうどんだけやりまくったのかっていうね。
あれ指示した監督すごいし、演じた俳優もすごい」
笑いが止まらないらしい。
「あっ」玄関で靴をはきながらまだ再現している。
「それロミオの真似? それとも
「素」
素なんだ。
「今日もしっかりロミオった! おれ」
そんなに幸せになれるってすごくないか。
まあシーツを巻いたあたしはオリビアハッセーにはほど遠いが。
カーテンを開けて窓から見送ると、自転車でわざとよろよろ一周して見せている。
どこまでサービス満点なの。
私も笑ってガラス越しに手を振る。