第九十七段 他意
文字数 374文字
(前も言ったと思うけど、あの頃の四十は長寿のお祝いで、いまの還暦みたいなものです。)
桜花 散り
老いらくの来むといふなる
道まがふがに
桜の花が舞い散って、あたりを曇らせてくれますように。
老いというものが来るという道を見えなくして、
大臣がいつまでもお若く、お元気でいられますように。
なにその素敵な歌!
堀河の大臣てあなた、行平さん業平くんたち在原一族の頭を押さえつけてる張本人でしょう。
藤原
叔父で養父の
しかも、
因縁の。二条の后こと高子さまの、お兄さま。
だけど、どう読んでもこの歌、百パーセントお祝いの気もちしか入ってない。
〈他意〉という文字は、彼の辞書にはないらしい。
私はときどき、とてもはずかしくなる。