第十五段 隠しごと
文字数 305文字
「業平くんは、私に『隠しごと』ってある?」とメッセージで訊いてみた。
訊いた直後に、自分で笑った。
「『ある』って言うわけないよね。それ隠しごとじゃないよね」
数分後、返事が返ってきた。
「はぁい」
ハートマークとキスマークがたくさんついている。
「なにそれ」と大笑いの顔文字付きで送ったら、
「とくに意味はないよ」
顔文字が舌を出している。
「隠しごともないし」
何だろう、この人は。どうしてこんなに、どこにも無理がないのだろう。
もう一度言うが、私は業平くんにいっさい、隠しごとをしていない。
言わなくていいだろうと思うことがあるだけだ。
彼もそうだろうと思う。