第十七段 花の客
文字数 372文字
以前、ひさびさに業平くんが有常くんのお家を訪ねたら、たまたま桜がきれいに咲いていたそうだ。
「おまえが来たときに、桜が咲いててくれてよかったな」と有常くん。
「桜が咲いてるあいだに、おれが来てくれてよかっただろ?」と業平くん。
この二行、違うことはわかるんだけど、
どう違うのか、考えれば考えるほどわからなくなる。
※もとの歌。
あだなりと名にこそ立てれ 桜花
年にまれなる人も待ちけり
移り気だとよく言われる桜の花だけど、
こうして待っていたじゃないか、めったに来てくれないきみを。
今日来ずは 明日は雪とぞ降りなまし
消えずはありとも花と見ましや
今日ぼくが来なかったら、明日はこの花、雪のように散っていたはず。
消えてしまわないまでも、もうお花見じゃなかったよね。