第二十二段 食べ歩き ※ちょいエロ
文字数 594文字
「どうして一人の男で満足できるの?」
ちょっと見くだした感じの声音で再生してみてください。
それはそれはモッテモテの姫だった。いわゆる「とっかえひっかえ」というやつ。
よくもまあ体力が続くものだ、と私はあきれていたのだけど、
何年もたって、突然、ひじょうに重大な事実に気がついた。
マグロは体力を使わない。
よりによってこの啓示の訪れたのが、業平くんが私の中に入って動いているさいちゅうだったものだから、思わず私が笑ってしまったせいで、業平くんはひどくびっくりした。
「あとで話すね」
と言っているのに、彼が動くのを止めて不安そうな顔で見上げるから、手みじかに説明した。それで彼も笑いだしてぶじ再開でき、いつもよりさらに盛りあがりさえした。
あのとき小さくならなかった業平くんは、本当に偉大だと思う。
誰とつきあっても満足できない人にかぎって、自分に問題があることに気づかない。
ひとくちかじって捨てるのをくりかえすだけでは、どんな料理もそこ止まり。味なんてわからないままだ。
なのに、それをグルメだとかんちがいする人は多い。
女も男も。
私は、業平くんだけでいい。他の男と一回寝たら、そのぶん業平くんと寝るのを一回逃がしたことになる。もったいなすぎてそんなことできない。
だって彼は毎回違うのだ。
千回なら千回、八千回なら八千回、違う。
飽きない。