第百八段 連動 ※ちょいエロ
文字数 837文字
男の人でも手荒れするのね。
いそいそとクリームを持ってくる私。
「塗ってあげるからお手々出して」
クリームを彼の手の甲に乗せて、塗りひろげて、
それから私の手のひらにクリームを取って、指を一本ずつ握るようにして、すりこんであげた。
こういうの、とっても楽しい。なんだかお母さんになったみたい。
業平くんは、おとなしく、じっとしている。
「しみる? 痛い?」と私。
「ううん」と彼。
「はい、できた」
「ありがとう」
感慨深げに自分の手をながめている。
「井筒の手にも塗ってあげる」
そう言われて自分の手を見て、ぎょっとした。たしかに私のほうがかさかさだ。
ちゃんとお手入れしてなかったな。はずかしい。
業平くん、指先にクリームを取って、ていねいに私の手に塗ってくれた。
とってもていねいに塗ってくれた。
とーってもていねいに……
「何してるの?」
荒れてるの、そこじゃないと思うんですけど。
ひとさし指を、私の指と指のあいだに入れて、ものすごーくていねいにこすっている。
指の
また
というやつ。にこにこしてる。
「あっ」
とか言ってる。上向いて目つむって。嬉しそうに。
ばかだ。
「『あっ』て何、『あっ』て」と私。「演技?」
「演技じゃない」と彼。「ほんとに連動してる。ここと」
「うそでしょ?!」
「うそじゃない。もう固くなっちゃった」
ええっ、指のまただけでそこまで??
さすが歌詠み。想像力絶倫だ。
それとも男って、みんなこんな単純なことでコーフンできるの? だとしたら凄いな。
まあ業平くん以外の男のことは、私には知りようがないのですが(知ってどうする)。
「井筒も気もちよかったでしょ?」
う……
うん。
自分の手、もっと大事にしないといけないなと思いました。ふだん雑に扱いすぎてる。ハードな仕事させすぎてる。ごめんね、私の手たち。
じつはこんなに敏感でもあった。忘れてた。
こうして攻められると、かなり危険。
私も連動しそうだった。いや……、
した。