第四十二段 夢の通い路[かよいじ] ※ちょいエロ
文字数 492文字
業平くんに後ろから抱えられたかたちで眠っていたんだけど……
その姿勢のまま、彼がもぞもぞ動いている。
「あ、寝てていいよ」と言う。
寝てられますかって!
「井筒が言ったんだよ。『眠ってるあいだにいつのまにか入れられちゃうっていうの、いいな』って」
「い、言ってない!」
「言った」
「言ったっけ?」
「言った」
言ったかも。
忘れてた。
そして彼が憶えてる。いつものパターン。
「やっぱり『いつのまにか』は難しかったな」ぶつぶつ言っている。
「ここちょっと開いて」的確に指示を出してくる。
最近「行くの?」と訊いてくる。自分で思いついて気に入ったらしい。
甘くささやく、というのではぜんぜんない。とっても嬉しそうに訊く。
「行くの?」
「行く」
「うん」
この「うん」は彼だ。とっても優しい声を出す。
手のひらに乗せられてぶるぶるふるえている仔猫のような気もちに私はなる。
「行くって、言わないと、わかんない?」と私。
「わかるよ」と彼。「きつい」
じゃ訊くな! ばかっ。
いつかなんとかして仕返ししてやろうと思うんだけど、いまのところいい方法が思いつかない。