第七十七段 ハンター ※わりとエロ
文字数 1,148文字
気のおけない人ばかりだったらしい。有常くんも至くんも呼ばれていた。ただ、私のことを知らない人も来るそうだったから、私は遠慮した。
至くんが事前にこっそり電話してきてくれた。
「井筒さん連れてこないの?」
業平くんが私をふりかえる。私は首と手を同時に、小さく振る。
「連れていかない」と業平くん。
「了解」と至くん。優しい。
よく通る声なので私にも聞こえた。
当日、帰ってきた業平くんは、すごく酔っぱらっていた。めずらしい。
玄関に座りこんでそのまま寝てしまいそうになっている。
お水をあげたら飲んだ。そのまま私の体をあちこちいじり出す。半分眠ってるのに。
「眠いの眠くないの」と訊くと「眠い」と言う。
「お風呂沸かして」と言う。
お風呂を沸かしたのに、入るひまがなかった。
ベッドにもつれこんでずーっと私の体をいじっている。あまりに酔っていて立たない。こんな彼は初めてだ。
ほとんど眠っているようなのに、手だけ起きてるんだろうか。
いつもと変わらない。いつもより激しい。
宴会のあいだずっと私にさわりたいと思っていた、と言う。
いつもと変わらない。指のはらで私の入り口をずっと、そっとさわっている。
もう無理、というときに絶妙のタイミングで、ぐっと中に突っこんでくる。
外したことがない。
中の天井の、いちばん敏感な部分を攻められる。指で。ここは私の、自分の指はとどかない。彼自身でもこんなふうに鋭くはこすれない。
「どうしてそこだってわかるの?」と訊くと、
「探すから」と言う。
そうなのだ。
歌を作るときと同じ。最適なことばを探すときと同じ。彼は探す。というより、ゆっくり輪をちぢめていって、絶妙のタイミングでとらえる。外さない。
狩りに似ている。
私もいっしょに探している、と実感できるときは幸福だ。
ただ、ときどき、こんなふうに、
私は、探される側で、
彼は一人なんじゃないかと、いう気がする日がある。
いきなり、ぐりっと手を反転させられて驚いた。
中の、天井と反対側の壁を攻められる。天井の反対側だから床? わからない。
初めてだ。
「おれ以外にこんなことされたことある?」と耳もとで訊く。
「誰もしてくれなかったの?」と訊く。
何度も訊く。ない、誰も、と叫んでいるのにまだ訊いてくる。
「気もちいいのにね」と言う。「してあげればいいのに」と言う。「愛してるならするよね、ふつう」と言う。「いいよ、行って」と言う。「行こうね」と言う。「行って」と言う。
「愛してる」と言う。くりかえし言う。こんな彼は初めてだ。
「井筒。愛してる」
私はさっきから声をもらさないように枕に顔を当てて叫んでいるので、返事ができない。
涙がこぼれる。
私も愛してる、業平くん。
それだけでいいじゃない。