第二十六段 続・記憶力 ※ちょいエロ
文字数 990文字
(このエピソードは前のと続けて読んでください。)
今日は序盤、すごく時間をかけてていねいに攻められた。
きつく吸ったり噛んだりしないで、舌のほんの先っちょで、ちょん、ちょん、と乳首をつつくというのを永遠にくりかえされ、文字どおり死ぬかと思った。
終わってから
「あれだけで行ったの初めて」
と言ったら
「そんなことない。ひさしぶりだけど」
と訂正された。
「○○マンション(前の住居)にいたときは、よく行ってた」
と言う。
驚いて聞いてみたら、いままでに何をしたら私がどんなふうに行ったか、ことごとく記憶しているらしい。
誇るふうでさえない。愛しているならあたりまえと思っているらしい。
「でも、何百回、とかだよね?」
と訊くと落ちついて
「千二百二十三回」
と言う。
「数えてるの??」
手帳に付けているらしい。愛しているならあたりまえと思っているらしい。
ばかか天才か、どっちなのだ。
昔の男と比べるのは下品でよくないとは思うのだけど、つい思い出してしまう。
昔つきあっていた男が
「女の人って乳首だけでも行けるんだよね」
と言っていろいろしてきて、私が行かないのを見るとひどく不愉快そうな顔つきになり、それからどんどん邪険になっていって、最後はびっくりするような失礼なことを言って私を捨てた。
絵に描いたような高学歴高偏差値男だった。きっとどこかで本を読みあさって勉強してきたのだろう。きのどくに、その努力がむくわれなかったので不愉快になったのだ。
努力は重要だしすばらしいが、そもそも方向性をまちがえていると意味がない。
たいへん幸福なことに、私にはその高偏差値男にかんする記憶がほとんどない。あまりに辛かったのでぜんぶ消し飛んでしまったらしい。思い出せるのはそういうばかばかしい断片だけだ。
そして、それらの記憶のおかげで、業平くんがどんなに貴いひとかよくわかる。
「手帳見せて」と言ってもはずかしがってなかなか見せてくれなかった。さんざんお願いしてやっと見せてもらった。
ある日の欄に、ものすごくちっちゃい字で「R」と書きこんである。
「これ何」
と訊くと、真剣に考えこんでいる。
「おれにもわかんない」
だめじゃん。
「あ!」私が先に思いついた。「『ロミオる』の略?」
「それだ」と彼。
大喜びで、二人でハイタッチする。
ばか決定だ。
私もだ。