第七十三段 月のうさぎ
文字数 379文字
手が腱鞘炎になるくらい。
あたしの文章力が爆発的にアップしたのはあの時期だ。
あくまで当社比ですけど。
彼にほめられたくて。
彼を喜ばせたくて。
あたしは書いた。書きに書いた。
相手は在原業平だ。ついていくだけでただごとじゃないのだ。何度、脳が焼き切れて死ぬと思ったかわからない。
でも、それも、至福だった。
焼き切れて死んでも悔いはない──と思っていた。
朝起きると、もう彼からのメッセージが届いている。
「おはよう」
その後に、彼が夜のあいだに考えた歌が続く。
それは例えば、
(大意)
「きみはお月さまの中のうさちゃん。
こんなにはっきり目に浮かぶのに、さわれない」
なんていう、とんでもなく甘々なものだったり(あーはずかしい、あーはずかしい)、
ここにはとても書けないくらい、
エロいものだったりした。
大半は、後者。