第九十段 ことわざ ※ちょいエロ
文字数 769文字
たいてい、私のしたくがまにあわない。
もちろん、いつも私が悪い。
まだ化粧の途中だったり、洗い髪を乾かしている途中だったりする。
私が悪いんだけれども、
ほんのちょこっとだけ言い訳させてもらうと、
業平くんがかならず約束の時刻より三十分早く来る
せいもあるのだ。
玄関のチャイムが鳴る。あわてて出迎えると、きれいにコートなど着て立っている。
(いい男)
と一瞬デレそうになる私だがデレてる時間はない。
「ほんとごめん。すぐしたくするから座って待ってて」
言いながら洗面所へ駆けもどる。
私の言うのは「ダイニングで座って待ってて」なのだが、気がつくとベッドルームでベッドに腰かけて待ってる。そうじゃない。
とてもまじめな顔で、きちんと座っていて、動こうとしない。
しかたないから、
いやこれ照れるんですよ。いまから服着て出かけるんだから。
でもその前にいったん部屋着を脱がなくちゃならない。
しかたないから、おしゃれ着を持ってバスルームに隠れてもぞもぞ着替えはじめる。
気がつくと真後ろにいる。
だから!
「わーい」
何が「わーい」だ。
抵抗もむなしくベッドまで連れていかれて押し倒される。胸を吸われる。
「右の胸を吸われたら、左の胸をもさし出しなさい」
いいから着替えさせて!
一瞬で儀式を終えて、「よし」と大まじめに言う。
何が「よし」だ。
「今日できることを明日に延ばしてはなりません」
両手の親指を立てている。(
いろいろまちがってる気がするが気のせいだろうか。
いま儀式と書きましたが、これをほぼ毎回やられます。
なのに
「ほら井筒、いそいでいそいで」
電車やバスの時間にはかならずまにあいます。
私一人だったらきっとぐずぐずしてけっきょく逃がしてる。
なんかすごい。