木を徙す(上)
文字数 468文字
読者は、秦の
その前に2人の男が立って、その木を眺めていました。
「おい、お前、この木がなんで立てかけてあるのか知っているか?」
「いや、しらね」
男は鼻をこすりながら答えました。
「俺はお前ほどよく知ってねえからよう、なんでこんなところに、木が立てかけてあるのか、しらね」
「じゃ、よく聞けよ、これはよお、新しく
「衛鞅様?」
「そうよ、衛の国からいらっしゃった、衛の国の公子・
「ほう、その衛鞅さまがどうなすったんだ」
「衛鞅様はだな、左庶長という官職になられて、この木を北門までうつしたら、十金を与える、そうご命令をお出しになられている」
「金をそんなにくださるのかい」
当時の金属です、科学技術が発達せず、鋳造の技術もととのわない中で、それだけの量の金属は、非常に貴重なものでした。
聞いていた男は半信半疑のようでした。