偉大なる白起(下)ー地理については別項を立てます-

文字数 1,957文字

 さて、以下に話を続けます。

「二十七年(癸酉、紀元前二八八年)
 秦・趙の杜陽を抜く。

 二十八年(甲戌,公元前二八七年)
 秦は趙・新垣、曲陽を抜く。

 二十九年(乙亥、紀元前二八六年)
 秦・魏の河內を撃つ。魏の安邑を陥落させる。

 秦・韓を夏山に破る。

 宋・滕を滅ぼし、薛を伐ち、東に齊を破り、五城を取る、南に楚を破り、地三百里を取る。西に魏軍を破る。

 齊の湣王が宋を亡ぼす。」

 続いて、秦と趙の小競り合いと、韓・魏の領地をまた秦が削り取ったことと、宋の事績が現れます。

 桀宋として本文で取り上げた、宋の領土拡張ですが、周りの国々を攻め滅ぼし、かなりの領土を獲得したと記されています。これは、武靈王や、白起の事績と似ていないでしょうか。宋も、彼らの事績にならおうとしたのかもしれません。

 ただ彼らにとって不幸だったのは、隣国に強大な齊という国があったことです。齊に対し、宋がどのように戦ったのか、その将軍が、どんな人物だったのか興味がわく所なのですが、最終的には齊に押し切られる形で、宋は滅びたのでした。

「三十年(丙子、紀元前二八五年)
 秦・齊の九城を抜く。

 三十一年(丁丑,公元前二八四年)
 燕王、樂毅を上将軍とし、他国と協力して齊を伐ちました。齊の湣王は国中のありったけの兵を集め、濟西の地に防戦しましたが、齊軍は大敗しました。魏軍は宋の地を取り、趙軍は河間を取りました。楽毅は自ら軍を率い長躯して追撃しました。六か月の間に、齊の七十余城を下し、皆を郡県としました。」

 これは、有名な楽毅の事績です。歴史的事実としては、齊軍はその前に、宋の軍と戦ったこと、秦の軍と戦ったこと、それらを抑えておくべきかもしれません。ともかく燕と連合軍は齊の防衛線を突破し、七十余城を攻め落としています。

「三十二年(戊寅、紀元前二八三年)
 秦・魏の安城を抜く。秦軍、大梁に至る。

 三十三年(己卯、紀元前二八二年)
 秦・趙の兩城を抜く。

 三十四年(庚辰、紀元前二八一年)
 秦・趙の石城を抜く。

 三十五年(辛巳、紀元前二八〇年)
 秦の白起が趙軍を破り、斬首した数、二万、代の光狼城を取りました。また司馬錯に隴西の兵を発して、蜀から楚の黔中を攻め、これを抜きました。楚は漢北と上庸の地を献じました。

 三十六年(壬午、紀元前二七九年)
 秦の白起が楚を伐ち、鄢、鄧、西陵を取りました。

 この年に、田單が即墨により、齊の版図を楽毅から取り返す話があります。」

 さて続いて、ここまでまた秦が今度は趙の版図を削っていく様子が見られます。齊は燕の支配から脱却します。実に燕の支配は三十一年から三十六年の五年で破れます。趙や、秦が、中山や魏の河東の地をがっちりと支配して国に組み込んだのに対して、燕にはそれだけの国力がなかった、最後まで齊を押し込む力はなかったのかもしれません。これは、単なる私の感想です。

 秦はほかにまた楚の土地も奪っていっています。黔中、漢北、上庸という地域が、秦の版図に組み込まれています。

「三十七年(癸未、紀元前二七八年)
 秦の大良造の白起が楚を伐ち、郢を抜き、夷陵を焼く。楚・東北に都を陳に徙す。

 三十八年(甲申,公元前二七七年)
 秦の武安君は巫、黔中を定め、初めて黔中郡を置く。

 三十九年(乙酉、紀元前二七六年)
 秦の武安君が魏を伐ち、両城を抜く。

 楚王・西に江南の十五邑を取る。

 四十年(丙戌、紀元前二七五年)
 秦の相國の穰侯が魏を伐ちました。韓は暴鳶に魏を救わせましたが、穰侯は大いにこれを破りました、斬首すること四万、暴鳶は開封へと走りました。魏は八城を納れて和を結びました。穰侯はまた魏を伐ち、芒卯を走らせ、北宅に入りました。魏の人は溫を割いて和を結びました。

 四十一年(丁亥、紀元前二七四年)
 魏はまた齊と合従しました。秦の穰侯は魏を伐ち、四城を抜き、斬首した数は四萬でした。

 四十二年(戊子、紀元前二七三年)
 趙人、魏人が韓の華陽を伐ちました。韓の陳筮の機転で秦が出兵しました。魏王は南陽を割いて和を結びました。」

 またここまで、楚も、韓も、魏も秦に領土を切り取られ続けています。そしてその背景・先頭には、常に白起がいました。そしてその武功は長平において最大に達するのですが、それはこの後の話です。しかし、ここまで白起という一人の人物が、大きな領土を秦にもたらしたこと、そしてその用兵の巧みさは群を抜いていたと覚えておいていただければ幸いです。

 何かの戦術を知っていたのではないかという話は先にしましたが、それはわかりません。当時の人々がわからない、つまり白起が相手にわからせなかったのかもしれません。そうであれば、なおさらまたそのすごさが感じられるのではないでしょうか。
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