秦の誓い

文字数 969文字

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「どうして(ころも)がないといおう

 君と綿入(わたい)れを共にしよう

 王が行って(いくさ)(おこ)されるのならば

 私の()(ぼう)(みが)いて

 君と王の(あだ)を共にしよう」

詩経(しきょう)秦風(しんふう)無衣(ぶい)


 秦、というのは古くからある国として、各書に描かれています。孔子が編纂(へんさん)したという『詩経(しきょう)』の中にも、秦風(しんふう)(秦の国の(うた))という項目が立てられ、秦の国の民謡(みんよう)がいくつかおさめられています。

 そしてその多くが、戦争の歌です。上にあげた詩はそのうちの一つで、王(ここでは(しゅう)の王を指す)に従って、敵のために戦おう、そう呼びかけています。これは秦という国の、軍事国家としての特質を端的に表しているように感じます。

 秦の国を表す有名な文としては「秦の誓い」、『秦誓(しんせい)』があります。この文を『尚書(しょうしょ)』という古代の歴史書で読んだことはない人でも、朱子が編纂した『大学(だいがく)』(『大学章句(だいがくしょうく)』ともいう)で、この『秦誓(しんせい)』を愛唱されている人もいるでしょう。

 ぼくもこの文が大好きです。「己に才能がなくとも、人の才能を受けとめ、自らのもののようにする」(()一介(いっかい)の臣、()り,斷斷猗(だんだんい)として他技(たぎ)()きも,その心、休休(きゅうきゅう)(えん)として,それ()るるあるがごとし・・・。)そのスピリット、精神は、とても美しいと思います。

 この文の最後には、一人の力により国は隆興(りゅうこう)し、一人の力によって国は衰退する、そのようなことが書いてあります。

 先に述べたように、秦の国は強力な軍事国家でした。しかしその中心には丞相として国を率いる、優秀な家臣がいました、そのような人物が活躍する素地があったということを、忘れてはいけないと思います。

 もちろん、優秀な人材といっても、優れた武将や、法家(ほうか)(法によって人民を支配するという思想家)が主で、儒家の政治ではありません。しかし、人を生かそうとする、そして民を守ろうとする歴代の秦の君主や政治家の想いや、まなざしは、随所に見て取れると思います。

 これから、『資治通鑑(しじつがん)』の訳を中心にして、断片的にではあると思いますが、秦の歴史を追っていきますが、そのベースには、この『秦誓(しんせい)』のまなざしが、背景に、あちこちににじみ出ていると思います。

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