秦・夏太后の治世

文字数 1,576文字

 しばらく、時代を追います。

 四年(B.C.二四三)

 春、蒙驁(もうごう)が魏を伐ち、(ちょう)と、有詭(ゆうき)とを取りました。三月に軍を解散させました。

 秦の質子(ひとじち)が趙より帰りました。趙の太子も出でて国に帰りました。

 七月、(こう)が発生し、疫病が起こりました。

 ちなみに蝗の子が始めて生まれたものを(えん)(もしくはケン)といい、(はね)ができて飛行して(こう)といい、苗を食い(わざわい)をなすと注にあります。イナゴの群生したものをいうのではないかと思いますが、専門家に譲ります。

 (れい)をくだし、百姓(こくみん)(ぞく)千石(せんせき)(おさ)めるものは、爵一級を拜しました。

 魏の安厘王(あんきおう)が薨じ、子の景閔王(けいびんおう)が立ちました。(ここ簡体字使われているかもしれません)

 五年(B.C.二四二)

 蒙驁(もうごう)が魏を伐ち、酸棗(さんそう)(えん)(きょ)長平(ちょうへい)雍丘(ようきゅう)山陽(さんよう)等三十城を取り、初めて東郡(とうぐん)を置きました。

 このころ、蒙驁(もうごう)という将軍が、魏との戦いで戦功をたてているのが目立ちます。

 (かつて)め,劇辛(げきしん)は趙にあって龐煖(ほうけん)と善くしていました。しばらくして劇辛は燕に仕えました。

 燕王は趙がしばしば秦に(くる)しめられ、廉頗(れんぱ)は去り、龐煖(ほうけん)が将となったのを見て、その(つかれ)()りて趙を攻めようと思い、劇辛に問いました。

 劇辛は答えて申すよう、「龐暖は(くみ)し易きのみ!」とのことでした。

 燕王は劇辛を将として趙を()たせました。趙は龐暖がこれを(ふせ)ぎ、劇辛を殺し、燕の師・二万を取りました。

 諸侯は秦の攻伐の()む時が無いことを(うれ)えました。((ひそ)かに相談でもしたのでしょうか?のちの合従の引き金になったと注は言っています)

 六年(B.C.二四一)

 楚、趙、魏、韓、衛は合従しそして秦を伐ちました。楚王が合従の長となり、春申君(しゅんしんくん)が事を用い(策略を()ったか)、壽陵(じゅりょう)を取りました。

 函谷(かんこく)に至って、秦の師(軍隊)が出てきました。五国の師(軍隊)はみな敗走しました。楚王はこのため春申君を(とが)めました。春申君はこのためにますます(うと)んぜられるようになりました。

 觀津(かんしん)の人・朱英(しゅえい)が春申君に言って申し上げました。

「人はみな楚を強いと思っております。君(春申君)はそれを用いて弱かった。それについて英(朱英、自分のこと)はそうはおもいません。

 先君の時は,秦は楚と善かった、二十年もの間、楚を攻めませんでした、どうしてでしょうか?

 秦は黽厄(ぼうあい)の塞を超えて楚を攻めることは、不便だったからです。道を両周(東周、西周)に借り、韓、魏を背にして楚を攻めることは、不可能だったのです。

 今はそうではありません。魏は旦暮(朝夕)にも(ほろ)びますでしょうし、(きょ)鄢陵(えんりょう)()しむことはできないでしょう、魏は()いてそれらを秦に与えるはずです。そうすれば秦の兵は(ちん)(楚の首都)を去ること百六十里です。

 臣の見るところのものとして、秦と楚が日び(たたか)うところが見えます。」

 楚はこの献策によって陳を去り、壽春(じゅしゅん)(うつ)りました(遷都しました)、命じて(えい)といいました。春申君は(ほう)()()き(呉に封ぜられ)、(しょう)の事を行いました。

 秦は魏の朝歌(ちょうか)と衛の濮陽(ぼくよう)を抜きました。衛の元君(げんくん)はその支屬(しぞく)を率いて野王(やおう)徙居(しきょ)し、その山を(へだ)ててそして魏の河内(かだい)を保ちました。(この辺、地図を見ないと詳しく説明できないようです)

 七年(B.C.二四〇)

 秦が魏を伐ち、(きゅう)を取りました。

 秦の夏太后が(こう)じました。ここまで秦を導き治世を行ってきた宮廷の権力者がいなくなったわけです。

 蒙驁(もうごう)が卒しました。魏の戦線で赫々(かくかく)たる武功をたてていた蒙驁は、始皇帝が二十歳の年になくなったわけです。秦には殉死の風習があることが知られていますが、ここでは夏太后との関連は不明です。

 八年(B.C.二三九)

 魏が趙に(ぎょう)を与えました。

 韓の桓惠王(かんけいおう)(こう)じ、子の(あん)が立ちました。

 この八年、秦の事績は全く書かれていません。しかし夏太后の死後、宮中での暗闘が繰り広げられていたのではないでしょうか。次の年に、通鑑は詳しい事情を述べています。
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