3 「また来ようね」
文字数 3,051文字
「このエロスの権化め……!」
アイヴィはメラメラと燃える瞳で俺をにらみつけた。
お尻のあたりを何度も両手で撫でては、頬を赤らめている。
「どうかしたの、アイヴィ?」
と、ルカが俺たちの元に泳いできた。
さすがに運動神経抜群で、綺麗なフォームだ。
月並みな表現だけど、人魚を連想する。
「あ、あ、あたしのお尻に顔を突っこんだんですっ! 感触を確かめるように顔を擦りつけて、じっくりたっぷりねぶるようにっ!」
「いや、そこまではしてないだろ!?」
「変態ですっ。エロ魔人ですっ。こんなやつは一緒にこてんぱんにしましょう、お姉さまっ。世のすべての女性のために、ハルト・リーヴァ許すまじっ」
「お尻に……? 突っこんで……擦りつけて……」
ルカがジトッとした目で俺を見た。
「ハルトは胸だけでなくお尻にも興味津々……?」
違う、違うんだ! 事故なんだ! 不可抗力だったんだ!
俺はさすがに慌てた。
「い、いや、その、悪かった。ちゃんと前を見てなくて」
「ハルトはわざとそんなことする人じゃないよ。アイヴィも機嫌直して。ね?」
と、リリスがフォローしてくれた。
ありがとう、リリス……。
「勝負ですっ」
熱血口調で叫ぶアイヴィ。
「へっ?」
「あたしの清純な体を汚した報い──ビーチバレーでこてんぱんにしてあげますっ。そうでなければ、あたしの気持ちの収まりがつきませんからっっ!」
なんでそうなるんだよ!?
──というわけで、なぜかビーチバレーをすることになった。
チーム分けは、俺、リリス、アリス、サロメVSルカ、アイヴィ、ジネットさんだ。
勝負は白熱したものになった。
「──遅い」
残像を生み出すほどの速度で陣地を駆けまわるルカ。
「待て、因子を使って超スピードで動くとか反則だろ!?」
「速ければいいってものじゃないよ、ルカ!」
サロメも負けてはいない。
「気配が──消えた!?」
驚くルカの足元に、サロメの打ったボールが叩きこまれる。
「エルゼ式暗殺術隠密歩法──ボクのスパイクは相手に気づかれずに敵陣に突き刺さる」
「相手にとって不足はないわ」
ビーチボールを拾い、ルカがサロメを見据えた。
その瞳には、まるで魔族や魔獣と戦うときのような強烈な闘志が宿っていた。
戦闘者としての本能に火がついたらしい。
……いや、これただのビーチボールだからな。
「私も全力で攻める──」
告げたルカの動きがさらに加速する。
「残像がさらに増えた……!?」
今度はサロメが驚きの声を上げる番だった。
「お姉さま、素敵です」
アイヴィがルカの側で歓声を上げている。
「あたしたち、手が出せないじゃない……」
「うーん、やっぱり直接戦闘系の人たちはすごいですね~」
呆れたようなリリスと、ほんわかと笑うアリス。
実際、俺もほとんど手を出せない。
残像さえ生み出すほどの超高速で動き回るルカと、それを上手くサポートするアイヴィ。
対して、気配を消して死角からスパイクを打ちこむサロメ。
これ、ビーチバレー……だよな?
ほとんど人外バトルと化した眼前の光景に、俺はあ然となりっ放しだった。
と、激しい打ちあいでボールが空中に大きく弾む。
「ルーズボールおねがいっ」
サロメが叫んだ。
「わ、分かったっ」
「ですぅ」
急いで走り出すリリスとアリス。
──って、
「ち、ちょっとストップ……」
かなりの勢いでこっちまで走ってくる二人を、俺は慌てて制止した。
スピードがつきすぎていて、このままだとぶつかる!
だけど全力で走る彼女たちは、急には止まれない。
「きゃあっ……!」
二人の悲鳴と、
「んぐぅぅ……っ!?」
むぎゅぅぅぅ、と柔らかな膨らみに顔を塞がれた俺のくぐもった声が重なった。
ちょうどリリスとアリスに押し倒され、豊かな胸が俺の顔に押しつけられた格好だ。
二人のおっぱいはともに勝るとも劣らぬ柔らかさと弾力を兼ね備えていた。
「やぁぁぁ、ご、ごめんなさい」
「胸、当たってしまいました……恥ずかしいぃ……」
慌てるリリスと恥じらうアリス。
「だ、大丈夫だ……むしろ、このままでずっといたいくらい……」
俺のほうは極上ともいえる感触を顔面に受けて、意識がピンク色だった。
「……やっぱり『女体を狙う者 』ですね」
アイヴィが呆れたような怒ったような顔でつぶやく。
いや、今のも事故だから! わざとじゃないから!
でも、気持ちよかった……。
そうやって遊んでいると、あっという間に時間は過ぎ──。
水平線に沈みゆくオレンジ色の夕日を、俺たちは静かに見つめていた。
「少しは元気でた? ハルト」
隣でリリスが微笑む。
「えっ」
「バーラシティでハルトさんが元気なかった、ってリリスちゃんが。だから海水浴を提案したそうですよ」
と、アリス。
「後からリリスちゃんが教えてくれました」
「えへへ。みんなで楽しみたい、っていう気持ちもあるんだけどね」
「うん、楽しかったー」
「お姉さまの水着姿を見ることができて満足です」
「私もリフレッシュできました。誘っていただいてありがとうございます」
サロメとアイヴィ、ジネットさんが口々に言った。
アイヴィはビーチバレーでさんざん動き回ったからか、いつの間にか機嫌が直っている。
「私も気分転換できたわ」
さらにルカも。
そうだな、俺も──。
「みんな、心配してたんだよ」
「あたしは……別にっ」
アイヴィがぷいっとそっぽを向く。
「なんかいいこと言いそうな感じだから、アイヴィはしばらく黙ろうね」
「むぐぐ……」
と、サロメがアイヴィの口を手で塞ぐ。
「少しでもハルトの気持ちが楽になったらいいな」
「どうせなら、ハルトくんにちゅーでもしちゃえば? きっと一発で元気になるよ」
サロメが悪戯っぽく笑って提案する。
「ち、ちちちちちゅーって、そんなあたしはっ!?」
リリスがたちまち真っ赤になった。
以前のキスを思い出したのか、唇を押さえている。
「ふーん……? 何かあった?」
「リリスちゃん……?」
サロメとアリスが同時にリリスを見つめる。
それから俺のほうを意味ありげに見て、にやりと笑った。
「本当に何かあったんだ……?」
「怪しい……」
「いやいやいや」
追及するサロメとアリスにギクリとしつつ、俺は両手を振った。
と、
「キスをすると、ハルトが元気になる……?」
ルカが自問するようにつぶやいた。
「私もハルトを元気づけられる……」
「だ、駄目ですっ、お姉さまの唇をこんな男に与えるなんてぇぇっ」
「私、初めてだから……上手くできるか自信がない」
ルカはチラチラを俺の顔を見ている。
ま、まさか、いきなりキスして来たりしないよな……?
「もう」
リリスはふうっと息をつき、それから俺を見て微笑んだ。
「また来ようね。みんなで、一緒に」
「……そうだな」
またこんな日々を過ごすために。
そして、こんな日々を守るために。
俺は、もっと大きな力を得てみせる──。
アイヴィはメラメラと燃える瞳で俺をにらみつけた。
お尻のあたりを何度も両手で撫でては、頬を赤らめている。
「どうかしたの、アイヴィ?」
と、ルカが俺たちの元に泳いできた。
さすがに運動神経抜群で、綺麗なフォームだ。
月並みな表現だけど、人魚を連想する。
「あ、あ、あたしのお尻に顔を突っこんだんですっ! 感触を確かめるように顔を擦りつけて、じっくりたっぷりねぶるようにっ!」
「いや、そこまではしてないだろ!?」
「変態ですっ。エロ魔人ですっ。こんなやつは一緒にこてんぱんにしましょう、お姉さまっ。世のすべての女性のために、ハルト・リーヴァ許すまじっ」
「お尻に……? 突っこんで……擦りつけて……」
ルカがジトッとした目で俺を見た。
「ハルトは胸だけでなくお尻にも興味津々……?」
違う、違うんだ! 事故なんだ! 不可抗力だったんだ!
俺はさすがに慌てた。
「い、いや、その、悪かった。ちゃんと前を見てなくて」
「ハルトはわざとそんなことする人じゃないよ。アイヴィも機嫌直して。ね?」
と、リリスがフォローしてくれた。
ありがとう、リリス……。
「勝負ですっ」
熱血口調で叫ぶアイヴィ。
「へっ?」
「あたしの清純な体を汚した報い──ビーチバレーでこてんぱんにしてあげますっ。そうでなければ、あたしの気持ちの収まりがつきませんからっっ!」
なんでそうなるんだよ!?
──というわけで、なぜかビーチバレーをすることになった。
チーム分けは、俺、リリス、アリス、サロメVSルカ、アイヴィ、ジネットさんだ。
勝負は白熱したものになった。
「──遅い」
残像を生み出すほどの速度で陣地を駆けまわるルカ。
「待て、因子を使って超スピードで動くとか反則だろ!?」
「速ければいいってものじゃないよ、ルカ!」
サロメも負けてはいない。
「気配が──消えた!?」
驚くルカの足元に、サロメの打ったボールが叩きこまれる。
「エルゼ式暗殺術隠密歩法──ボクのスパイクは相手に気づかれずに敵陣に突き刺さる」
「相手にとって不足はないわ」
ビーチボールを拾い、ルカがサロメを見据えた。
その瞳には、まるで魔族や魔獣と戦うときのような強烈な闘志が宿っていた。
戦闘者としての本能に火がついたらしい。
……いや、これただのビーチボールだからな。
「私も全力で攻める──」
告げたルカの動きがさらに加速する。
「残像がさらに増えた……!?」
今度はサロメが驚きの声を上げる番だった。
「お姉さま、素敵です」
アイヴィがルカの側で歓声を上げている。
「あたしたち、手が出せないじゃない……」
「うーん、やっぱり直接戦闘系の人たちはすごいですね~」
呆れたようなリリスと、ほんわかと笑うアリス。
実際、俺もほとんど手を出せない。
残像さえ生み出すほどの超高速で動き回るルカと、それを上手くサポートするアイヴィ。
対して、気配を消して死角からスパイクを打ちこむサロメ。
これ、ビーチバレー……だよな?
ほとんど人外バトルと化した眼前の光景に、俺はあ然となりっ放しだった。
と、激しい打ちあいでボールが空中に大きく弾む。
「ルーズボールおねがいっ」
サロメが叫んだ。
「わ、分かったっ」
「ですぅ」
急いで走り出すリリスとアリス。
──って、
「ち、ちょっとストップ……」
かなりの勢いでこっちまで走ってくる二人を、俺は慌てて制止した。
スピードがつきすぎていて、このままだとぶつかる!
だけど全力で走る彼女たちは、急には止まれない。
「きゃあっ……!」
二人の悲鳴と、
「んぐぅぅ……っ!?」
むぎゅぅぅぅ、と柔らかな膨らみに顔を塞がれた俺のくぐもった声が重なった。
ちょうどリリスとアリスに押し倒され、豊かな胸が俺の顔に押しつけられた格好だ。
二人のおっぱいはともに勝るとも劣らぬ柔らかさと弾力を兼ね備えていた。
「やぁぁぁ、ご、ごめんなさい」
「胸、当たってしまいました……恥ずかしいぃ……」
慌てるリリスと恥じらうアリス。
「だ、大丈夫だ……むしろ、このままでずっといたいくらい……」
俺のほうは極上ともいえる感触を顔面に受けて、意識がピンク色だった。
「……やっぱり『
アイヴィが呆れたような怒ったような顔でつぶやく。
いや、今のも事故だから! わざとじゃないから!
でも、気持ちよかった……。
そうやって遊んでいると、あっという間に時間は過ぎ──。
水平線に沈みゆくオレンジ色の夕日を、俺たちは静かに見つめていた。
「少しは元気でた? ハルト」
隣でリリスが微笑む。
「えっ」
「バーラシティでハルトさんが元気なかった、ってリリスちゃんが。だから海水浴を提案したそうですよ」
と、アリス。
「後からリリスちゃんが教えてくれました」
「えへへ。みんなで楽しみたい、っていう気持ちもあるんだけどね」
「うん、楽しかったー」
「お姉さまの水着姿を見ることができて満足です」
「私もリフレッシュできました。誘っていただいてありがとうございます」
サロメとアイヴィ、ジネットさんが口々に言った。
アイヴィはビーチバレーでさんざん動き回ったからか、いつの間にか機嫌が直っている。
「私も気分転換できたわ」
さらにルカも。
そうだな、俺も──。
「みんな、心配してたんだよ」
「あたしは……別にっ」
アイヴィがぷいっとそっぽを向く。
「なんかいいこと言いそうな感じだから、アイヴィはしばらく黙ろうね」
「むぐぐ……」
と、サロメがアイヴィの口を手で塞ぐ。
「少しでもハルトの気持ちが楽になったらいいな」
「どうせなら、ハルトくんにちゅーでもしちゃえば? きっと一発で元気になるよ」
サロメが悪戯っぽく笑って提案する。
「ち、ちちちちちゅーって、そんなあたしはっ!?」
リリスがたちまち真っ赤になった。
以前のキスを思い出したのか、唇を押さえている。
「ふーん……? 何かあった?」
「リリスちゃん……?」
サロメとアリスが同時にリリスを見つめる。
それから俺のほうを意味ありげに見て、にやりと笑った。
「本当に何かあったんだ……?」
「怪しい……」
「いやいやいや」
追及するサロメとアリスにギクリとしつつ、俺は両手を振った。
と、
「キスをすると、ハルトが元気になる……?」
ルカが自問するようにつぶやいた。
「私もハルトを元気づけられる……」
「だ、駄目ですっ、お姉さまの唇をこんな男に与えるなんてぇぇっ」
「私、初めてだから……上手くできるか自信がない」
ルカはチラチラを俺の顔を見ている。
ま、まさか、いきなりキスして来たりしないよな……?
「もう」
リリスはふうっと息をつき、それから俺を見て微笑んだ。
「また来ようね。みんなで、一緒に」
「……そうだな」
またこんな日々を過ごすために。
そして、こんな日々を守るために。
俺は、もっと大きな力を得てみせる──。