4 「かつてないほどの」
文字数 2,231文字
嬉しそうに駆け寄ってきたのは、この間のパーティで知り合った四人のランクS冒険者たちだ。
精霊使いのアリィさん、剣士のバルーガさん、魔法使いのフェイルさん、僧侶のレットさんの四人である。
「久しぶりだねー。元気だった?」
特に二十代前半の女性──アリィさんは、そのときにリリスやアリスと意気投合したらしく、嬉しそうに話している。
「お前も呼ばれたんだな」
「共にがんばろう、ハルトくん」
「お前さんにも神の御加護を。全員、無事でこのクエストを終えようではないか」
三人の男性陣が俺に声をかけてきた。
いずれも頼もしい味方だ。
「へえ、この人たちと知り合いだったんだ?」
と、驚いたようなサロメ。
「ハルトくん、けっこう人脈広いじゃない」
「ランクSの猛者たちと、いつの間に……」
ルカがつぶやく。
「ああ。この間、リリスたちの家に招かれたときに知り合ったんだ」
「……リリスたちの家に招かれた?」
サロメとルカの声が重なった。
あれ?
なんで二人とも急に険しい顔になったんだ?
「まさか、それって……親に紹介するってやつじゃ?」
「アリスもリリスも抜け駆け……」
「もしかしたら、すでに結婚の準備に入ってるんじゃ……」
「行動が速い……」
サロメとルカがひそひそと何事かをささやき合っていた。
心なしか表情がこわばっているような……。
どうしたんだ、二人とも?
「ち、違うよっ。二人とも誤解しないで」
リリスが顔を赤くした。
「そ、そうですよ、お父様がハルトさんに会いたい、と言うので──た、他意はないんですぅ」
アリスも顔が赤い。
「会いたい? それはつまり娘婿として……?」
「地固めに入ってるということ……?」
サロメとルカがまたひそひそとささやき合う。
「あわわわ……べ、別にそんな思惑は……えっと、まったくないというわけでも、あ、いえ、そうじゃなくて……えっと」
リリスはしどろもどろだ。
「わ、私もあわよくばハルトさんとの距離を近づけたいとか、そういう思惑は……多少は、あ、いえ……なんでもないです……ぅ」
アリスも同じくしどろもどろ。
姉妹そろってテンパってる感じである。
だから、さっきからなんの話だよ?
俺だけ蚊帳の外だった。
「へえ、モテモテだね。ハルトくんって」
アリィさんがニヤリと笑った。
「けっこう可愛い顔してるし……どう、年上のおねーさんなんて?」
俺の肩を軽く抱いてささやく。
間近で見ると、かなりの美人だ。
「私、フリーだよ?」
「……!」
リリス、アリス、サロメ、ルカの四人が同時に振り返った。
「あはは、冗談よ、冗談。でも君たちの気持ちはなんとなーく分かったかな。みんな若いんだし、恋しなきゃねー」
と、嬉しそうなアリィさん。
「……そうだね、がんばらなきゃ」
「恥ずかしいですけど、でも……」
「ボクは、まあ……自分なりに……」
「恋……よく、分からない……」
リリスたち四人は面映ゆそうな顔で、思い思いのことをつぶやいているようだ。
「ま、すべてはクエストをやり遂げてからだね」
と、アリィさん。
「戦いは近いんだし、気を引き締めましょ」
そうだ、戦いのときは近い──。
これだけの大人数で、しかもこれだけ高ランクの冒険者たちと一緒にクエストをやるのは初めてだった。
緊張の反面、安心感も桁違いだ。
「かつてないほどの大規模クエストだ。気を引き締めていこうぜ」
バルーガさんが力強く言った。
その額に一瞬、黄金に輝く何かが浮かび上がる。
いや、輝きってほどでもない、淡い光。
今のは──!?
神のスキルの紋章に似ていた、けど。
でも、彼らがスキル保持者 とは思えないし、そんな気配もない。
そもそも、スキルを持っているのは全部で七人。
俺以外には『殺戮』の力を持つグレゴリオや『強化』の能力を持ったジャックさん、『予知』を使うエレクトラ──つまり、残りは三人だ。
彼らが全員保持者 だと数が合わない。
魔法の紋章の類かもしれないし、考えすぎなのかな。
だけど、今の感覚は……。
──しばらくして、俺たちはギルド本部の一室に案内された。
壁一面が巨大な画面になっている。
これが噂の──ギルド本部にしかないっていう超巨大虚無闇測盤 か。
画面上には世界地図が映し出され、その中心部に十三個の光点が点滅していた。
そして画面の右下には『出現予測:三時間後』という表示がある。
あの光点は『黒幻洞 』の出現予測地点を示しているはずだから、あと三時間後に、地図上の地点に現れるってことだろう。
しかも複数同時に。
通常は一つずつしか現れない黒幻洞 が、一度に十三個も現れるなんて聞いたこともない。
これだけの数の冒険者が集められたのも納得だった。
そして──レーダーが示している地点は、このルーディロウム王都と周辺のいくつかの町だ。
魔族になんらかの狙いがあるのか、偶然なのか。
俺には分からない。
俺にできることは、魔の者と戦い、一人でも多くの人を守ることだけ。
今は──ただそれだけを考えよう。
精霊使いのアリィさん、剣士のバルーガさん、魔法使いのフェイルさん、僧侶のレットさんの四人である。
「久しぶりだねー。元気だった?」
特に二十代前半の女性──アリィさんは、そのときにリリスやアリスと意気投合したらしく、嬉しそうに話している。
「お前も呼ばれたんだな」
「共にがんばろう、ハルトくん」
「お前さんにも神の御加護を。全員、無事でこのクエストを終えようではないか」
三人の男性陣が俺に声をかけてきた。
いずれも頼もしい味方だ。
「へえ、この人たちと知り合いだったんだ?」
と、驚いたようなサロメ。
「ハルトくん、けっこう人脈広いじゃない」
「ランクSの猛者たちと、いつの間に……」
ルカがつぶやく。
「ああ。この間、リリスたちの家に招かれたときに知り合ったんだ」
「……リリスたちの家に招かれた?」
サロメとルカの声が重なった。
あれ?
なんで二人とも急に険しい顔になったんだ?
「まさか、それって……親に紹介するってやつじゃ?」
「アリスもリリスも抜け駆け……」
「もしかしたら、すでに結婚の準備に入ってるんじゃ……」
「行動が速い……」
サロメとルカがひそひそと何事かをささやき合っていた。
心なしか表情がこわばっているような……。
どうしたんだ、二人とも?
「ち、違うよっ。二人とも誤解しないで」
リリスが顔を赤くした。
「そ、そうですよ、お父様がハルトさんに会いたい、と言うので──た、他意はないんですぅ」
アリスも顔が赤い。
「会いたい? それはつまり娘婿として……?」
「地固めに入ってるということ……?」
サロメとルカがまたひそひそとささやき合う。
「あわわわ……べ、別にそんな思惑は……えっと、まったくないというわけでも、あ、いえ、そうじゃなくて……えっと」
リリスはしどろもどろだ。
「わ、私もあわよくばハルトさんとの距離を近づけたいとか、そういう思惑は……多少は、あ、いえ……なんでもないです……ぅ」
アリスも同じくしどろもどろ。
姉妹そろってテンパってる感じである。
だから、さっきからなんの話だよ?
俺だけ蚊帳の外だった。
「へえ、モテモテだね。ハルトくんって」
アリィさんがニヤリと笑った。
「けっこう可愛い顔してるし……どう、年上のおねーさんなんて?」
俺の肩を軽く抱いてささやく。
間近で見ると、かなりの美人だ。
「私、フリーだよ?」
「……!」
リリス、アリス、サロメ、ルカの四人が同時に振り返った。
「あはは、冗談よ、冗談。でも君たちの気持ちはなんとなーく分かったかな。みんな若いんだし、恋しなきゃねー」
と、嬉しそうなアリィさん。
「……そうだね、がんばらなきゃ」
「恥ずかしいですけど、でも……」
「ボクは、まあ……自分なりに……」
「恋……よく、分からない……」
リリスたち四人は面映ゆそうな顔で、思い思いのことをつぶやいているようだ。
「ま、すべてはクエストをやり遂げてからだね」
と、アリィさん。
「戦いは近いんだし、気を引き締めましょ」
そうだ、戦いのときは近い──。
これだけの大人数で、しかもこれだけ高ランクの冒険者たちと一緒にクエストをやるのは初めてだった。
緊張の反面、安心感も桁違いだ。
「かつてないほどの大規模クエストだ。気を引き締めていこうぜ」
バルーガさんが力強く言った。
その額に一瞬、黄金に輝く何かが浮かび上がる。
いや、輝きってほどでもない、淡い光。
今のは──!?
神のスキルの紋章に似ていた、けど。
でも、彼らがスキル
そもそも、スキルを持っているのは全部で七人。
俺以外には『殺戮』の力を持つグレゴリオや『強化』の能力を持ったジャックさん、『予知』を使うエレクトラ──つまり、残りは三人だ。
彼らが全員
魔法の紋章の類かもしれないし、考えすぎなのかな。
だけど、今の感覚は……。
──しばらくして、俺たちはギルド本部の一室に案内された。
壁一面が巨大な画面になっている。
これが噂の──ギルド本部にしかないっていう超巨大
画面上には世界地図が映し出され、その中心部に十三個の光点が点滅していた。
そして画面の右下には『出現予測:三時間後』という表示がある。
あの光点は『
しかも複数同時に。
通常は一つずつしか現れない
これだけの数の冒険者が集められたのも納得だった。
そして──レーダーが示している地点は、このルーディロウム王都と周辺のいくつかの町だ。
魔族になんらかの狙いがあるのか、偶然なのか。
俺には分からない。
俺にできることは、魔の者と戦い、一人でも多くの人を守ることだけ。
今は──ただそれだけを考えよう。