Thx, I love you.-2

文字数 1,141文字

「ボクだったら、マッサージしてあげるとか、ゆっくり寝かせてあげるとか、そういうことをしますけど」
 アゲハの具体的な提案に、なるほど、とフユトは思う。けれど、それすら改まったようで照れくさいと思ってしまうのだから、フユトにつける薬はないのかも知れない。
「フユトさんが出来ることでいいと思うんですよね」
 あれは駄目、これは気に入らないと宣うフユトの我儘を封じつつ、優しく微笑むアゲハに、フユトはもう何も言えなかった。
 そんなことがあったものだから、如何せん足りない頭をフルで働かせていたところ、互いに仕事が立て込んで二ヶ月もご無沙汰になってしまったのだ。溜まっているのは嘘ではないし、さっさと本番にシケ込みたい気持ちもあるからこそ、フユトの舌は積極的に、シギの裏筋を舐め上げる。
「口、開けろ」
 いつもより僅かに低い声が命じるまま、フユトは意図を汲んで、最大まで膨張するそれを難なく飲み込めるだけ、口を開く。
「吐くなよ」
 シギの忠告に頷く間もなく、口蓋垂の更に奥へと捩じ込まれ、咄嗟の嘔吐反射で涙目になる。
 これで腰を動かされたら確実に吐いていたものの、シギは絶妙な加減を心得ているから、喉の粘膜の締まりを甘受するに留まる。奥の方から湧き上がる粘度の高い唾液に溺れないよう、ひたすら鼻で呼吸して、シギが満足するまでの数分をやり過ごす。
「は、ァ、」
「いい子だな」
 唾液によって糸を引くそれが出ていくに従って大きく呼吸すると、シギの手が優しく耳たぶを抓るから、それだけでヒクリと粘膜がさざめく。一度も触られていないのに、意味深に熱を帯びて妖しく蠢く粘膜の存在を実感してしまう。
「キス、」
 上手に、とはいかなくとも、フユトにしては丹念な口淫をして、そろそろ十分以上は経つだろうか。ちゃんと出来たご褒美が欲しいと甘くなってしまう声で強請る。
 我知らず蕩け始めたフユトの表情に、シギは愛しげに目を細め、床に座り込む身体に目線を合わせるように膝を折ると、
「それで、何のつもりだ?」
 愛しさとは真逆の獰猛な声で、フユトの意図を聞く。
 嫉妬を含んだ剣呑な色をシギの瞳に見て取って、フユトはそれでも、甘く震えた。今すぐにでも引き裂かれたいと思いながら、恐らく、誤解しているだろうシギのために唾を飲み、アゲハとのやり取りの一部を話して聞かせる。顔が焼けそうなほど熱くなる。
 目線を伏せたままのフユトに、シギは喉で嗤った。
「なるほど」
 フユトの唇を濡らす唾液や体液を優しく指で拭って、
「マンネリさせて悪かったな」
 サディスティックに宣う。
 ぞく、と身震いするフユトは、きっと酷くされることに期待を寄せつつ、
「キス、する」
 シギに呼吸を奪われる酸欠の海を揺蕩い、腸が零れるくらい抉られるのも悪くないと目を閉じた。













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