この美術館の可視/不可視のフレームはなにか、について(中)
文字数 1,580文字
るるせは観に行ったとき、自分が意図せず他人に不快を与えそうになった箇所が、二箇所あったそうなのです。ひとつが展示のナルシズムを妨害するかたちになってしてしまった箇所、もうひとつが通せんぼをしたかたちになってしまった箇所、だというのです。
説明すると長いので省略しますが、ペインターFさんの展示は、正面奥にプロジェクターから歌っている動画を再生し、両サイドに絵画が配置されている、というものです。ペインターFさんはどうしても自画像を描いてしまうのですね。そして、映像は自伝的要素のある動画と自分を語る歌なのでした。よって、どう見積もってもナルシズムを堪能してもらおうという意図がありますし、それは成功していたのです。みなさん、食い入るように映像と歌を観て聴いていたのです。
まっすぐ突っ切ろうと思うと、プロジェクター映像を遮ってしまうことになるのです。つまり、遮らないで次に進むためには、大きく迂回してから進まないとならない。ところがるるせの奴、突っ切ってしまったためにプロジェクターに投影する映像を妨害してしまったのです。
やはり行き止まりのスペースなのですが、ひとが一人入ることが出来ることしか出来ないくらいの大きさのスペースなのです。そこで、熱心に文面を読んでいたお姉さんがいたのです。書いてある文面が興味深いので、るるせも読もうと、スペースをのぞき込んだらしいのです。それでお姉さんがるるせがいることに気づいたそうなのですが、こっちを見て身体が震えたそうなのです。そりゃそうなのです。入り口を塞いだかたちになってしまったのです。通せんぼです。しかも暗がかりになりそうな場所。これが悪意を持った男性だったら、と思って恐怖したのだと思うのです。
るるせは学識のない人間で、暗黙のルールがあまり通用しないし、他者への気遣い、配慮が足りないのでルールを理解していない。実際怒られたり恐怖されたりしているわけで、ルールの外部なのは明白。この「美術館という制度」が排除しているのがなにか、不可視だったのに、こうして考えると可視化されるわね。