潜在性ミル・プラトー(上)

文字数 1,789文字

いきなりなのですが、空海の言う『密教』の「密」とは、「潜在的」という意味なのです。「密」ではない一般の仏教を『顕教』、仮の教えでしかないとするのですよ。じゃあ、顕教とはなにか、というと、現働化されたものの諸関係でしかものを考えない、そういう教えである仏教のことだ、と言うのです。空海側からすると、ですが。
そうではなく、潜在的なものの諸水準とその生成、現働化の様々な方向や強度、そういったものを通して、世界を思考する仕方を密教だ、と定義するのですね。
強度……インセンシティのことね。アンダンシテ、と言った方がいいかしら。ニーチェの考えの根本にあるものよ。
空海の言う大日如来とは、要するに最も潜在的な実体のことなのですよ。より善きものは、より深い潜在性からの現働化、収縮の運動を繰り返す。如来は最大の収縮を実現させる実体で、この世界の隅々を満たしている、と。だから、これを全面的に肯定せよ、と言うのですね。
は、はぁ?
イマージュの問題ですよ……知覚のイマージュはすべての行為にとって記号となるのです。逆に、記号ならざるイマージュは存在しない! なのです。
うーん。なんだかよくわかんないけど、〈潜在性(ヴァーチャリティ)〉の話ね。リアルとヴァーチャル。
これを対置させるのではなく、「潜在性はリアルである」と考えるのです。これが、今回のお話なのです。
えーっと。ドゥルーズの話をしたいみたいね。だとしたら、道元の話もしなくちゃ、でしょう。『正法眼蔵』は、ドゥルーズの参考文献のひとつだし。
「知覚のイマージュはすべての行為にとって記号となる」は、ドゥルーズ『シネマ』からでしょ。『シネマ』には道元の話も出てくるわね。
料理をつくることも、掃除をすることも〈禅〉である、っていう、道元。只管打坐の思考法。ドゥルーズはどちらかというと、文章の方に共鳴してるっぽいけど。
ていうか、誰がどう考えても、「オリエンタリズム」だから道元も取り入れたようにしか思えないんだけどねー。言ったら怒られそうだけど。
『正法眼蔵』は読破したのですか、理科?
くっ! このみっしーからの挑発に乗ってはいけない! わたしは『正法眼蔵随聞記』ならば、読んだわよ。あれ、孔子スタイルよね。言ったらぶち殺されかねないけど。
いえ、それを言ったら『記紀』をつくることになった経緯だって問題になるのです。まあ、ぶち殺されかねないですけどね。
ヨーロッパでスコラ哲学がハイブリッドに興隆しつつあった頃に、道元は生きたのです。その頃の国際交流の中で思考を育んだひとなのですよ。ドゥルーズは『正法眼蔵』の、「蔵」というものに着目したのです。「時は出来事を保存する蔵である」ということ。
なんだろう。「阿頼耶識システム」のことを言い出さなくちゃならないのかしら? 終わらないわよ、その話。三島が阿頼耶識について、うまいたとえ話をしていたわね。『豊饒の海』の中で、ね。
右とか左とか、世の中はうるさいのですよね。だいたい、構造主義はマルクスを経由してるから全部左だとか言うのは、気が狂っているのです。檄文はだいたいエンゲルスの方がつくった、と言われているし、エンゲルスは資本家なのですよ。あと、西欧マルクス主義は一国社会主義を「ミスリーディングだ」とするのです。
保守と改革で右左言ってたら、政治家は全員、通常は左と言うことになるのです。日本の場合、戦中に反戦活動を非合法にやってた団体があり、それとごちゃごちゃになっているのです。あと、学生運動をやってたひとたちがみんな書物を読んで理解してたなんてのはあり得ないです。発行部数をよく考えてほしいのです。
ところで、空海の話は。
空海伝説が多すぎて、真に受けてたら終わるので、「考え方」を見ただけのことなので、それも注意なのです。あと、門下でいうと最澄の流れの方が多いのは、小学生あたりでも社会科の授業で知っていることなのです。
えーっと。結局、みっしーはなにを言いたかったのかしら。
久々にヴァーチャリティの話をするのです。〈潜在性〉のお話です!
ああ、そうなのね。今回もまた、ぐだぐだになりそうな予感がするわ。コンパクトにまとめましょうね。
舵取りが難しいのですよ……とは、言わないでおくのです。
今回もまた、いきなり始まっちゃったけど。

だらだらトークを珈琲でも飲みながら聞いてくれると嬉しいわ。


   次回へつづく!

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

【田山理科】

 主人公にして家主。妹のちづちづと知らない町に引っ越し、二人で暮らしを始めたが、ちづちづがどこからか拾ってきた少女・みっしーも同居することに。趣味は絵を描くこと。ペインティングナイフを武器にする。

【みっしー】

 死神少女。十王庁からやってきた。土地勘がないため力尽きそうなところをちづちづに拾われて、そのまま居候することに。大鎌(ハネムーン・スライサー)を武器に、縁切りを司る仕事をしていた死神である。

【ちづちづ】

 理科の妹。背が低く、小学生と間違われるが、中学生である。お姉ちゃん大好きっ娘。いつもおどおどしているが、気の強い一面をときたま見せる。みっしーとは友達感覚。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色