地下室からのコナトゥス【第十話】
文字数 948文字
ヘーゲルの「欲望の主体」は対象を完全に破壊することが不可能で、また、そんな破壊は結果的に自己の喪失を帰結する。「欲望の主体」は対象に絶対的に依存している。欲望は「それが破壊する世界なしにいかなる同一性も維持できない」。欲望は対象を破壊するだけじゃ自己を維持できないの。それゆえに、欲望は「破壊から、生きた他なる事物の超越的不可能性を承認することへと、発展しなければならない」のだった、と。こういうわけで、いいかしら。
そうなのです。したがって、バトラーはこうまとめるのです。「ヘーゲルの『現象学』の主体は志向的な対象没入と同一性の反省的追及の様態として現れるわけではない。その主体は、その充足のために、間主観的存在として自身を構成するために、他者を要求する欲望としても現れる。他者の、そして他者による承認を通してそれ自身の反映=反省を得ようとする努力において、この主体はその依存が様々な属性のひとつであるだけでなく、その依存そのものが自己であることを発見するのである」と。
次回へつづく。