KKO問題とバーチャル美少女(上)

文字数 1,948文字

お姉ちゃん、この前つくったかぼちゃの煮つけ、どうだった?
かぼちゃだった!
この前つくったパンプキン饅頭、どうだった?
かぼちゃだった!
この前つくったかぼちゃの味噌汁はどうだった?
かぼちゃだった!
この前つく……。
かぼちゃだった!
こ……。
かぼちゃだった! 全部かぼちゃだった! なんかすごいかぼちゃだらけだった!
やだなぁ、照れるなぁ。わたし、パンプキン料理の才能があるねっ!
うん。うまかった。全部うまかった。もうジャックランタンになっちゃえばいいくらい。食卓がかぼちゃオンパレードだった。一か月くらいずっと……。
えへへ……。
うぅ……。ちづちづの顔が本当にかぼちゃに見えた一か月間だった……。
一か月も続けてないよぉ。もう、お姉ちゃんたら。学校でもハロウィン一色だったし、おうちでもパンプキン料理つくれて楽しかったよー。
それはなによりね。わたしはもうちづちづがパンプキンヘッドに見えて軽くトラウマに……。
えへへ。やだなぁ、もぅ。本当にわたしは天才だなぁ。お姉ちゃんがそこまで褒めてくれるなんて珍しいもんねー。わたし、頑張るから。
うん。ほどほどに、ね。本当にトラウマになったから。
「トラウマ」だなんて、それほど「ウマかった」のね、わたしの料理。
うん。テーブルの上が毎日かぼちゃで茶色かった……。ぐはっ。
お姉ちゃん、倒れるほどトラウマ? だっけ? それくらいウマかったんだね。わたし、嬉しいなぁ。クリスマスはどうしようかなぁ。七面鳥さん?
(ヘリウムガスを吸った宇宙人ボイスで)「ワレワレハ、ウチュウジンダヨ!」
なんだ、我々って……。もう一人、ここにハロウィン癖が抜けてないやつがいるな?
(ヘリウムボイスで)「リカヲブッコロシテ、チヅチヅヲモラウYO!」
(みっしーの頭をげんこつで叩いて)キモイからな? みっしー、あんた、パンプキンちづちづに対してなにかないの? 次、クリスマスのある一か月間もまた、メインの食材ひとつで押し切る食卓になるわよ? てゆーか、そのヘリウムボイスはなに? なに「ケロってる」の? 声をケロらせる意味がわかんないわよ?
意味段落が崩壊してるのですよ、理科。質問はひとつひとつしていかなきゃダメなのです。意味がコロコロ変わりつつ読点が連鎖してるのと同じなのですよ? 幼稚園生の文章教室ですかぁ?
うーん。言い回しの意味がまどろっこしくてわからないよ? 文体自体に対してのメタ的なやつはやめたほうがいいよ、みっしー。
そうだぞ、みっしー。谷崎潤一郎先生はな……。
谷崎文体に対してはノーコメントなのです! あの句点なしで続いていく文体に対してはノーコメントなのです! ボクだって芦屋の記念館に行ったのですよ? 足を運ぶ理由がわかるですか? 好きなのですよ、谷崎文学が! それはともかく、今の理科の喋りはアウトです。谷崎の名前を出したところで、ボクの大鎌〈ハネムーン・スライサー〉でぶった斬るのは確定なのです。谷崎と自分を重ねようだなんておこがましいのです。てゆーか、全然違うわバーカ! なのです。
じゃあ。まず、パンプキンちづちづに関しては?
ボクもちづちづがパンプキンヘッドに見えるようになったのです……。
ヘリウムボイスは?
ハロウィンが抜けてないわけなのではないのです!
みっしーのその言い方、「なくなくなくなくなくなくなくなーい?」みたいだねっ!
なんだか文豪の名前出した時点でぶっ殺されそうな気が、わたしもしてきたわ……。
それはともかく。ボクもバーチャルユーチューバーになってみようと思ったのです。ボクの声も高いと言えば高いのですが、声優さんみたくケロるのは無理だし、どうせなら「バ美肉おじさん」みたくボイスチェンジャー使おうと思ったのですよ。その前に、試しにヘリウムガス吸って声を出してみたのです。
今度は「バ美活」してる「バ美肉おじさん」にぶっ殺されそうな気がしてきたわ……。
まあ、ボクは女の子ですから、「バーチャル美少女を受肉」しなくてもいいわけなのですが。
? ? ? んん? 言ってる意味がわからないよ! そもそも「バ美肉おじさん」ってなに? ユーチューバーって動画サイトでなにかやるひとだよね? バ美活って? ユーチューブの活動のこと? わかんない。どういうこと? 教えて、お姉ちゃん。
バ美活……。業の深い活動なのですよ。知らないほうが身のため、という言い方もできるのです……。
みっしーの、バーチャルユーチューバーになろう計画が発動していることを知ったわたし。ちづちづは知らない単語の数々に混乱しているみたい。田山家をユーチューバーのスタジオにすることは許されないので、話し合う必要があるとわたしは思った。けど、話が長くなりそうだし、ここはひとまず、話を区切るわね。と、いうわけで。

次回に続く!

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登場人物紹介

【田山理科】

 主人公にして家主。妹のちづちづと知らない町に引っ越し、二人で暮らしを始めたが、ちづちづがどこからか拾ってきた少女・みっしーも同居することに。趣味は絵を描くこと。ペインティングナイフを武器にする。

【みっしー】

 死神少女。十王庁からやってきた。土地勘がないため力尽きそうなところをちづちづに拾われて、そのまま居候することに。大鎌(ハネムーン・スライサー)を武器に、縁切りを司る仕事をしていた死神である。

【ちづちづ】

 理科の妹。背が低く、小学生と間違われるが、中学生である。お姉ちゃん大好きっ娘。いつもおどおどしているが、気の強い一面をときたま見せる。みっしーとは友達感覚。

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