あるエージェントのターゲットの話【第二話】
文字数 1,180文字
ざっくり言うのです。通常、キャラは作者から逃れられないのです。作者が小説を書いているのですからね。なので、小説が作者のイデオロギーや主張の代弁になっているのを、モノローグとバフチンは呼んだのです。トルストイを例にあげていますが、ほとんどすべての小説はモノローグから逃れられていない、とするのです。
ドストエフスキーのキャラは、独立した人物のように多面性を持ち、解釈の主体として振舞い、独自の思想の主張者として振舞うのです。ここで重要なのは、登場人物全員が、自らの主義主張を持ち、その主張者として振舞う、ということなのです。
それによって、キャラが作者の駒であるモノローグとしての小説ではないものが可能となる。wikiには書いてないけど、そういうことよね。ただし、優劣をつけたいわけではないので、注意が必要ね。それと同時に、このポリフォニーを駆使できたのはドストエフスキーくらいだ、って話にもなってるのよね、確か。
ここから心理療法のオープンダイアローグなんてのが出てきたわけですが、そのオープンダイアローグの『詩学の3つの原則』のひとつが「不確実性への耐性」である、ということは、逆を言えば、イデオローグとしての個人個人が『場』に集まって『対話』状態になったとき、ひとはコミュニケーションの不確実性と、立ち向かい、振舞わなくてはならない、ということでもあるのですよね。
つづく。