おうちでごろごろ計画

文字数 1,517文字

おはよー、お姉ちゃん! 朝だよー。
あ、ちづちづ、おはよ……って、まだ午前四時! 今日、なにか予定あったんだっけ?
やだなぁ、お姉ちゃん。今日はみっしーのバイトの面接日じゃない。
え? あ? そうだっけ? それにしても、面接の日だからってこんなに早く起きるものなの? 遠いところなの? なにも聞かされてないんだけど……。
「理科はうるさいから当日まで黙っておくのです!」って言ってたよ、みっしー。
あの阿呆が書類審査通るとは思えないんだけど……。うーむ、面接かぁ。面接なぁ……。
面接になにか悪い思い出があるの? わたしがはじめてのバイトの時は笑顔で送り出してくれたじゃない。
いや、ひとによるだろ。みっしーは働くこと全般に向いていない。絶望的なほどまでに。
理科には言われたくないのです! みっしー参上! 三条烏丸! 三条烏丸より帰還致しましたぁぁああぁぁあ、なのです。
どこほっつき歩いているのかと思えばみっしー、あんたはどこで一体なにをしているの、いつも。三条烏丸って、都にまで行っていたの?
ボクは神出鬼没がウリなのです。……嘘です。死神の仕事で向こうまで行っていたのですよ。関東に帰還! そして、バイトの面接。ボクの仕事は暇なときは暇なのです。縁切りの死神であるボクは、『待機組』なのです。
下っ端ってこと?
下っ端じゃねーよ、この牛頭馬頭メス!
あー、もう、わかったわよ。偉いね、みっしー。ゆっくり面接から転がり落ちてきなさい。
さっきからお姉ちゃん、みっしーとばかりお話してるー。ずるーい。わたしともお話しよーよー。
あー、まぁ、その……仕事をすることはとてもいいことだと思う。みっしーは家でゴロゴロしてばかりだったし。でもねぇ、いきなりどーしたっての、バイトの面接に行くなんて。やっと働く気になった?
何度も言うようにボクは死神として立派に働いているのです。……その隙間時間を使ってバイトをしよーという感動ストーリーを展開し、理科の魔の手からちづちづを奪取するつもりなのは内緒なのです!
ね。そんなことだと思っていたわよ。
お姉ちゃん。みっしーは照れてこういうこと言ってるだけだよ! 働く気があるよ、今は! 働く気があるうちに働かないと、一生ずるずるとニート人生歩むよ! ニート人口って実はものすごい数だよ! ね? 働いてもらお?
みっしー。あんた、どんなバイトをするの?
建物の中に二週間くらいいるだけの簡単なお仕事なのです。各種データを取られるだけの……。
…………。
えっと……笑えないよ?
笑わそうとしているわけじゃないのですよ、このバカ理科。ここからストーリーが始まるんじゃないですか! 落ちも意味も特にねぇですよ? 金! マネー! ラク!
その仕事、すっげぇきついからな? ちなみにわたしは似たようなメイクマネーしようとしたら口頭試問で落とされたわ。
お姉ちゃん、そういう話はオープンな場でするもんじゃないと思うの。なんだかお姉ちゃんもみっしーも、ラクをしようと生きてきたがゆえに、きっつい仕事をする羽目に陥るという、人生の落伍者を体現した存在であることが伝わってきて、わたし、涙が……。
ふふ……。泣いたわね、ちづちづ。
確かに泣いたです。ふふ……。学生のちづちづに、まさにそれを伝えたかったのです! まともに勉強して就職してサラリーを毎月ゲッツできるのが最強だ、と。ボクと理科は……そう、落伍者という名の反面教師。クッソ偉いのです。人生そのものを以て、生きる知恵を逆照射して理解させる……いわば究極の仕事人。「まともに働いてないからこいつらはクソ」なんて、誰にも言わせねーですよ!
じゃ、今日も二度寝タイムと洒落込もうかな。
ううぅ……。洒落になってない……。
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登場人物紹介

【田山理科】

 主人公にして家主。妹のちづちづと知らない町に引っ越し、二人で暮らしを始めたが、ちづちづがどこからか拾ってきた少女・みっしーも同居することに。趣味は絵を描くこと。ペインティングナイフを武器にする。

【みっしー】

 死神少女。十王庁からやってきた。土地勘がないため力尽きそうなところをちづちづに拾われて、そのまま居候することに。大鎌(ハネムーン・スライサー)を武器に、縁切りを司る仕事をしていた死神である。

【ちづちづ】

 理科の妹。背が低く、小学生と間違われるが、中学生である。お姉ちゃん大好きっ娘。いつもおどおどしているが、気の強い一面をときたま見せる。みっしーとは友達感覚。

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