探偵ボードレールと病める花々【第九話】

文字数 944文字

さて。ボードレールにおける第二帝政期のパリとは、なんだったのか?
ヴァルター・ベンヤミンは以前から「パリのパサージュ」という構想を持っていたのです。その構想の中から、ボードレール論がだんだんと肥大化していってしまったのです。ベンヤミンはそこで、それだけで一冊の本を作る気になってきたのです。そして1938年に書いたのが、『ボードレールにおける第二帝政期のパリ』なのでした。
でも、ボードレール論は一冊分は書かなかったし、ベンヤミンの『パサージュ論』も、未完ではあるのよね。
しかも、ベンヤミンというひとは、論文は書かない。もうちょっと、軽く書くのよね。それこそ、エッセイであるかのように。変わった思想家よね。
ベンヤミンといえば、『アウラ』の概念なのです。
日本では一般的に『オーラ』と呼んでいる、アレね。その『アウラ』を、定義したのは、ベンヤミンね。
複製技術時代における芸術作品は、一体どうなるのか。それをベンヤミンは分析したのです。
ちょうどカメラができた頃に論じた文章なのよね。
写真より絵画の方がアウラ(オーラ)があり、絵画より実物の方がアウラがある、としたのです。
後年、ボードリヤールが『ハイパーリアル』ということを言うのだけれど、それはベンヤミンのアウラの話が下敷きになっているのよね。
シミュラークルの話ですね。
そう。シミュラークルとは「まがい物」を指す。でも、ハイパーリアルなシミュレーション世界になっていくと、「オリジナル」が不在になる。世界にはシミュラークルのシミュラークルのシミュラークル……と言った風に無限後退するほど、コピーのコピーが蔓延して、オリジナルがなく、シミュラークルで世界が満たされてしまう。
ボードリヤールに言わせると、現実はだんだんそうなっていくというのです。
それが「現在」のこの世界だ、って風にも言える。そこには、快楽があるとするわ。
サンプリング、カットアップ、リミックス! なのです。
と、今でもオーラという日本語で流布する言葉、アウラをつくったベンヤミン。彼のあとには、ボードリヤールの姿も出てくるわけだけど、それでは、ベンヤミンの描いたボードレールと第二帝政期のパリのお話に、戻りましょうか。
そうですね。では、語っていくのです。
   でわでわ、次回へつづくわ!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

【田山理科】

 主人公にして家主。妹のちづちづと知らない町に引っ越し、二人で暮らしを始めたが、ちづちづがどこからか拾ってきた少女・みっしーも同居することに。趣味は絵を描くこと。ペインティングナイフを武器にする。

【みっしー】

 死神少女。十王庁からやってきた。土地勘がないため力尽きそうなところをちづちづに拾われて、そのまま居候することに。大鎌(ハネムーン・スライサー)を武器に、縁切りを司る仕事をしていた死神である。

【ちづちづ】

 理科の妹。背が低く、小学生と間違われるが、中学生である。お姉ちゃん大好きっ娘。いつもおどおどしているが、気の強い一面をときたま見せる。みっしーとは友達感覚。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色