オレたちに明日(Ass)はない!

文字数 2,194文字

ウォーキングは楽しいなー、るるるー。ただいまー。
おかえりなさい、ちづちづ。ウォーキングっていうか、お散歩だよね。
ううん(首を振る)。ウォーキング。ウォーキングデッドなの。
ウォーキングデッド……その言い方だとドラマか映画を連想するけど、ゾンビドラマを。
やだなー、お姉ちゃん。今は空前のゾンビブームだよ!
うっそ……。何年も前の話じゃなかったの、それ。
ワールドウォーゼーット! みっしー参上! ゾンビはっ! ゾンビはどこですか、ちづちづ! ボクが心臓に杭を打ってあげるのです! それとも、ニンニク? はっ! ナザレのお方がゴルゴタまで背負ったアレで攻撃なのですか?
お姉ちゃん。みっしーがガチで怖いよー。それにそれ、ドラキュラじゃなかったかな。
もー、いい加減にしなさい、二人とも。晩酌の時間よ。
まだ日が落ちてすぐだけどね。
で。アンデッドモンスターはどこです?
みっしー。ガチで興奮するのやめなさいな。
ガチ。ひとまえ昔は『ガチホモ』くらいしか用途のなかった言葉のガチなのですが、今となってなんでも『ガチ勢』と『エンジョイ勢』にわかれるのです。これはどういうことなのですか、理科。応えるのです!
うっわ。なんかすごく応じづらい振りが来たわね。ガチホモってしかし……。BLで『ナマモノは嫌ぁ』とかちづちづが言ってた頃が懐かしいわね。
わたし、そんなこと言ってたっけ?(ニッコリ)
酷い……。その返し、一方的にわたしが失言したみたいじゃないの。
理科、デリカシーが足りないのですよ?
クッソ! みっしーまで。いいもん、いいもん。そういう話題が花咲いていた時代だってあったのは本当だもんね。
本当だとしても、今はそれについて神経質になってる層が多いし、逆にひとのそういう傾向を蔑んだり弱み握ったとして攻撃の材料にする層も一定数存在して諍いが多いのです。言っていいことと悪いことがあってこれは悪いことなのですよ、理科!
お姉ちゃんのお馬鹿さん♡
クッソ。なに、この流れは。それに、数々の障害を乗り越えたところにBLの価値があるとか言ってなかったっけ、ちづちづ。
ところで。『ガチ』という言葉、息が長いですね。びっくりなのです。
説明しておくと『ナマモノ』というのは、現実の男性(生もの)に使う言葉だよ! ボーイスラブ作品のマンガやゲームや小説やボイスドラマが好きでも、ガチのナマモノは嫌い、と表明する腐女子も多かった時代もあったんだよ!
ボイスドラマ、昔はドラマCDって呼ばれてたですね、懐かしい。CDの総時間の八割は声優さんのそういうボイスが入ってる、という修羅を行く女子必携のCDだったのですよ。
はい、そこ、宣伝しないで。今もあるからどこまで話していいかわからないわよ。
話を戻すと、なんでも『ガチ』と『エンジョイ』でわかれる時代になった、というのがあるのです。それは、本人が言うこともあれば外から見てそう見えるというのもあるし、相手を攻撃する言葉として使うときもあって、大変なのです。
ホモォの話だとガチとソフト、で区別するのかな? だから、話からずれちゃうね。
昔はボーイズラブなんて言葉、なかったよね。雑誌からボーイズラブって名前が定着したけど。その前は全部『やおい』って呼ばれたのよね。今だと定義づけがされていて、二次創作や二次的な妄想がやおい、一次創作、オリジナル作品がボーイスラブって呼ぶって定義されてはいる。略称BLは、一次も二次も、どっちもまとめて、そう総称されるわね。
BL、GL、NL、TL。GLは百合、TLはティーンズラブだよね。NLはナチュラルラブ、つまりノンケ。
ウィキを見たらボーイズラブの語源は雑誌『イマージュ』のキャッチコピー「ボーイズラブコミック」だ、って書いてあった。わたしはマンガ雑誌『ビーボーイ』あたりからだったと思うのだけど。『ボーイズピアス』は完全にえろだったわね。ここらへんも語源のひとつに入ってるかも。ちなみに、『JUNE』はジュネーと呼ぶのだけれども、草分け的存在として伝説になってるわ。あと、『麗人』も、ね。
BLのマンガや小説の話を、してるからね! ゲイカルチャー雑誌については割愛。ただ、そこからそういう兄弟が芸能人として輩出されたので、そこだけ付け加えておくね。
それにしても、ティーンズラブなんて修羅場ってるのがデフォルトだし、同性じゃないと絶対に(精神的に)結ばれる「運命の恋」なんて描けない時代になってるんじゃないか、とわたしはたまに思うのだけれども。
悲観的だなぁ、お姉ちゃん。修羅場るのがドリームなんだよ! そこ否定したらTL全否定だよっ!
複数の恋する面々が修羅場になるのに否定的だとするなら、理科の論法で言うとハッテンバ文化はどうなるのです。少ない中での同族意識が生む連帯やそういう交渉もある、ということも付け加えないとぶっ殺されそうなのですが、書いたら書いたでぶっ殺される気がするのはなぜですかね……。
待った。もしかして、わたしたち、『ガチ』でBL論やってない?
うまくオチがついたね!
いや、ガチ勢とエンジョイ勢っていうのがいろんな世界にあって、その話をしようと思っていたのですが……。
ガチ勢には近寄れない、という現象がしばしば起こるけど、今日のこの会話は近寄りがたいところ、あるよね。ガチではないけど。
オチがついたね!
いや。やおいがある限り、ヤマもオチも意味もない……ッ。
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登場人物紹介

【田山理科】

 主人公にして家主。妹のちづちづと知らない町に引っ越し、二人で暮らしを始めたが、ちづちづがどこからか拾ってきた少女・みっしーも同居することに。趣味は絵を描くこと。ペインティングナイフを武器にする。

【みっしー】

 死神少女。十王庁からやってきた。土地勘がないため力尽きそうなところをちづちづに拾われて、そのまま居候することに。大鎌(ハネムーン・スライサー)を武器に、縁切りを司る仕事をしていた死神である。

【ちづちづ】

 理科の妹。背が低く、小学生と間違われるが、中学生である。お姉ちゃん大好きっ娘。いつもおどおどしているが、気の強い一面をときたま見せる。みっしーとは友達感覚。

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