探偵ボードレールと病める花々【第十二話】
文字数 1,830文字
ボクのアイドルであるちづちづもまた、探偵の役を演ずることになる。これは必然なのです。現在だって、テレビつければ探偵や刑事ドラマのオンパレードなのです。そこと重ね合わせて、見てほしいのです。そして現代はまた、テロルの時代でもあるのです。
ベンヤミンはこう解説するのです。「こうして遊民が知らず知らず一種の探偵になることは、彼にとって、社会的にまことに都合が良い。遊情が公認されるからである。彼の怠惰は外見だけのものであり、その背後には悪者を見逃さぬ観察者の油断なさがある。探偵の自負心はこうして膨らむ。大都市のテンポに相応しい反応方式を鍛え、ものごとをすばやく補足する。そのことによって彼は自分が芸術家に近い存在だと夢想することができる。スケッチを描く画匠の筆の速さは万人の嘆賞のまとであり、バルザックの主張によれば、そもそも芸術家はすばやい把握能力と不可分である、という」と。
エドガー・アラン・ポーは近代文学の最大の技術者の一人であり、ヴァレリーが指摘したように、科学小説を、近代宇宙論を、病理学的現象の叙述を、初めて手掛けているのです。こういったジャンルが、一般的に適用できるとポーが考えた方法の、精密な産物と思われたのです。まさにその点で、ボードレールはポーに与して、ポーの意向を体してこう書いているのです。
ポーの技術的成果のうちで、一番影響力が大きかったのは探偵小説だけど、これはボードレールの要請を満たした文学だった。なのでポーの作品を分析することは、ボードレール自身の作品を分析する一助となると言われているわ。
次回へつづく!