馴れ初め乙女(上)
文字数 1,212文字
死神は魂を運ぶのが役割なのですが、神通力をこの町で使いつくして行き倒れになっていたのですよ。ボクはひとや事物の縁を切って魂を運ぶ仕事をしているのです。ですが、さすがに大物の魂は手に余るものだったのです。力を使い果たしてしまっては、動くこともできず、電柱柱の横に置いてあったポリバケツで躓いてぶっ倒れてしまっていたのです。あのとき、ちづちづがボクを見つけて保護してくれなかったかと思うと……背筋が凍るです。
どんな境遇でも、もしボクがちづちづと出会っていたら、恋をしていたと思うのですよ。恩があることも一因ではあるのですが、恩があるからってのも好きになった一因でしかない。大きく見たら多くの理由のひとつだし、理科が言った通り、好きに理由はいらないです。